
1. 10年前と同じ契約書を使い続けている、大分の建設業経営者へ
この記事は、こんなあなたのために書いています。
大分で建設業を営み、施主から直接工事を請け負うこともあれば、元請として下請業者に仕事を出すこともある。あるいは、自分が下請の立場で元請から仕事を受けている。どちらの立場であっても、毎日の現場は問題なく回っている。請負契約書は、何年も前に作ったものを、相手の名前と金額だけ書き換えて使い続けている。
そんなあなたが、ふとした夜に「施工不良 損害賠償 期間」と検索して、この記事にたどり着いたのではないでしょうか。あるいは、新しい工事の契約書を作りながら、「この契約書のままで、本当に大丈夫なのだろうか」という、言葉にしづらい不安を抱えているのかもしれません。
その不安は、決して気のせいではありません。なぜなら、あなたが工事を引き渡したあとに負う責任のルールは、数年前に法律のレベルで大きく書き換えられているからです。そして、多くの建設業者の契約書と知識は、その書き換えに追いついていません。
この記事では、民法改正によって「契約不適合責任」が瑕疵担保責任から何が変わったのか、そして建設業者であるあなたが「請求される側」「備える側」として何を見直すべきかを、大分の中小企業の実情に即して整理します。
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2. 「うちは昔からトラブルなくやってきた」——その安心は、どこから来ていますか
経営者の方とお話ししていると、よくこう言われます。
「うちは昔からこの契約書でやってきて、大きなトラブルになったことは一度もない」
その言葉に嘘はないと思います。実際、これまで大きな紛争を経験せずにやってこられたのでしょう。けれど、ここで一度だけ立ち止まって考えていただきたいのです。トラブルがなかったのは、契約書による備えが万全だったからでしょうか。それとも、たまたま大きなトラブルに当たらずに済んできた、というだけなのでしょうか。
この二つは、まったく違います。前者であれば、これからも安心です。しかし後者であれば、いつ大きなトラブルが来てもおかしくない、ということになります。そして、その違いを分けるのが、まさに契約書の中身であり、契約不適合責任に関する条項なのです。
もうひとつ、よく聞く言葉があります。
「うちの契約書には免責特約を入れてあるから大丈夫」「瑕疵については、引き渡しから2年で切れるはずだ」
こうした知識は、決して間違いではありません。ただ、その多くが、2020年の民法改正より前の「瑕疵担保責任」の時代の感覚で止まっているのです。法律が変わったのに、知識が変わっていない。この「ズレ」こそが、今いちばん危ういところです。
そして、こうした状態にあるのは、あなた一人ではありません。私たちがご相談を受ける大分の建設業者の多くが、同じように「昔の契約書」と「昔の知識」のまま、日々の現場を回しています。だからこそ、ここで一度立ち止まる価値があります。
3. 2020年4月1日、あなたの責任の中身は根本から変わった
ここで、はっきりさせておきたいことがある。
2020年4月1日。この日を境に、あなたが建物や工作物を引き渡したあとに負う責任の中身は、根本から変わった。それまで「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものが、「契約不適合責任」という名前になった——という話ではない。名前が変わっただけなら、現場は何も困らない。問題は、責任の「数え方」と「中身」が、いくつも変わったことにある。
変わった点を、建設業に関わるところに絞って整理しよう。
① 注文者が使える「請求の手段」が4つに増えた
旧法の時代、施工不良が見つかったときに注文者ができたのは、原則として「損害賠償の請求」と「契約の解除」の二つだった。改正後は、これに「履行の追完請求」(直してくれ、という請求)と「代金減額請求」(その分、代金を下げろ、という請求)が加わり、合計四つになった。それぞれ民法562条、563条、564条に根拠がある。
請求の入り口が二つから四つに増えた、ということは、注文者があなたに何かを言ってくる経路が、単純に倍に増えたということでもある。
② 「隠れた」欠陥でなくても責任を問われる
旧法の瑕疵担保責任では、注文者が責任を問うには、その欠陥が「隠れた瑕疵」、つまり契約のときには気づけなかったものである必要があった。改正後は、この「隠れた」という要件がなくなった。問われるのは、ただ一点、引き渡したものが「契約の内容に適合しているかどうか」だけになった。
つまり、判断の物差しが「気づけたかどうか」から「契約書に何と書いてあったか」へと移った。契約書の記載が、これまで以上に決定的な意味を持つようになったということだ。
③ 責任を問われる「期間の起算点」が、引き渡しから「相手が気づいた時」へ
ここが、建設業者にとって最も重い変化である。
旧法の世界では、請負人であるあなたが責任を問われる期間は「引き渡しから1年」だった。引き渡して1年を無事に過ごせば、種類や品質の不具合について、あなたは原則として解放された。ところが改正後の民法637条は、その起算点を「注文者が不具合を知った時から1年以内に通知」へと変えた。引き渡しではない。相手が気づいた時から、なのだ。
考えてみてほしい。引き渡しから3年後に雨漏りが見つかったとする。旧法なら、とうに1年を過ぎている。しかし新法では、注文者がその雨漏りに気づいたその時から、1年の通知期間が始まる。つまり、あなたが「もう昔の工事だ」と思っている案件が、ある日突然、生きた責任として戻ってくる。これが、改正がもたらした最大の地殻変動である。
ただし、無期限に責任が続くわけではない。最終的には、不具合を知った時から5年、あるいは引き渡しから10年という消滅時効の枠がかかる(民法166条1項)。「相手が気づけば、いつまでも」ではないが、「引き渡して1年で安心」でもない。この感覚のアップデートが必要だ。
なぜ、今すぐ動かないのか
ここまで読んで、それでも多くの経営者はこう考える。「言いたいことはわかった。だが、今すぐ困っているわけではない」「弁護士に相談すれば、高くつくのではないか」と。
その気持ちは、よくわかる。だが、施工不良のトラブルは、予告して来てはくれない。引き渡しから何年も経って、忘れた頃にやってくる。そして、いざ紛争になってから契約書を見直しても、もう手遅れだ。契約書は、トラブルが起きる前に整えておくからこそ意味がある。事前に契約書を整える費用と、紛争になってから争う費用と時間を比べれば、どちらが安いかは明らかだろう。
実際に紛争がどう着地しているかを、公的なデータで見てみよう。国土交通省の中央建設工事紛争審査会には、年間でおおむね40件から50件の申請があり、そのうち6割近くが解決にいたっている。そこで公開されている実際の事例を見ると、新築住宅の工事をめぐって損害賠償として1,000万円を超える金額が請求された事案や、下請業者が元請に変更工事代金を請求した事案など、決して他人事とは言えない金額と構図が並んでいる。解決までにかかった期間も、数か月で済むものから、1年半から2年近くを要するものまである。
これらは、どこか遠い大企業の話ではない。中小の建設業者が、現実に巻き込まれている紛争の姿である。
4. 「免責特約があるから大丈夫」が通用しない4つの場面
さて、ここからが本題である。
多くの経営者が頼みの綱としている「免責特約」。契約書に「引き渡しから○年で責任は消える」「一切の責任を負わない」と書いておけば、それで守られる——そう信じている方は多い。
確かに、契約不適合責任の期間や範囲を契約で定めること自体は、民法上、原則として認められている。民法の期間の定めは「任意規定」なので、特約による調整が可能だからだ。しかし、「だから免責特約さえ入れておけば全部切れる」と考えるのは、危険な早合点である。免責特約が効かない場面が、いくつもある。建設業者が必ず押さえるべき4つを挙げよう。
① 不具合を知りながら告げなかったとき、免責は吹き飛ぶ
民法637条2項は、こう定めている。請負人が、その不具合の存在を知っていた、あるいは重大な不注意で知らなかった場合には、「相手が気づいてから1年」という期間制限は適用されない、と。
これは何を意味するか。あなたが施工の段階で「ここは少し不安が残るな」と気づいていながら、それを注文者に告げずに引き渡した場合、いくら契約書に短い免責期間を書いていても、その特約は通用しない、ということだ。
現場では「言わぬが花」が通る場面もあるかもしれない。だが、契約不適合責任の世界では、知っていて黙っていたことが、最も重く跳ね返ってくる。免責特約は、誠実な施工を尽くした業者を守る盾ではあっても、不具合を隠した業者を守る盾にはならない。
② 新築住宅の基礎・雨漏りは、10年間、特約でも逃れられない
これが、免責特約の最大の落とし穴である。
住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)の94条・95条は、新築住宅について、ある部分だけは「引き渡しから10年間」の担保責任を請負人・売主に強制的に負わせている。その「ある部分」とは、構造耐力上主要な部分(基礎・柱・壁・土台・はり・屋根版など、建物を支える骨格)と、雨水の浸入を防止する部分(屋根、外壁、サッシなどの開口部、排水管など)である。
そして決定的なのは、品確法94条2項・95条2項が、「これに反する特約で注文者に不利なものは、無効とする」と定めている点だ。これは「強行規定」と呼ばれるもので、当事者がどんな合意をしても、法律の方が優先される。
つまり、新築住宅の請負契約で、あなたが契約書に「責任は引き渡しから2年で消える」と書いたとしても、基礎や雨漏りに関しては、その特約は無効になる。10年間、あなたは責任を負い続ける。「免責特約があるから2年で切れる」という思い込みは、新築住宅の根幹部分については、根本から成り立たないのである。
③ 請負契約での免責特約には、そもそも限界がある
免責特約は、書けば必ず効くというものではない。
たとえば、注文者が一般の消費者(個人の施主)である場合、消費者契約法によって、事業者の責任をすべて免除するような条項は無効とされうる。また、下請取引においては、元請が下請に対して一方的に不利な特約を押しつけることが、下請法などとの関係で問題になることもある。
さらに、先に述べた民法637条2項のように、請負人が悪意・重過失だった場合には特約そのものが意味を持たない。免責特約は、あくまで「適法な範囲で、適切な相手と、適切な内容で」結んだときに初めて効力を持つ。テンプレートの文言をそのまま貼り付けただけの特約が、いざというときに役に立たない——これは、紛争の現場で繰り返し起きていることだ。
④ 「特約があるから安心」という思い込みこそが、最大のリスク
結局のところ、いちばん危ういのは、免責特約という言葉の響きに安心しきって、その中身を一度も検証していないことである。
あなたの契約書の免責特約は、誰が、いつ、どんな取引を想定して作ったものだろうか。新築住宅にも対応しているか。消費者が相手のときと事業者が相手のときで、書き分けがされているか。改正後の民法637条の「知った時から1年」という新しい起算点を踏まえているか。これらを一度も確認しないまま使い続けているなら、その特約は「お守り」ではなく「気休め」になっている可能性が高い。
免責特約は、正しく設計されてこそ、あなたを守る。逆に言えば、設計を誤った特約は、守ってくれると信じていたぶん、いざというときの衝撃が大きい。
5. 契約書を整えた経営者が手にする、もうひとつの未来
ここまで、少し厳しい話が続いた。だが、裏を返せば、こういうことでもある。
契約書を改正後の民法に対応させ、免責特約を自社の取引実態に合わせて正しく設計しておけば、施工不良のトラブルが起きたとしても、それは「想定の範囲内」の出来事になる。どこまでが自社の責任で、どこからは責任を負わないのか。その線引きが契約書で明確になっていれば、相手から請求が来ても、慌てることなく対応できる。紛争が、経営を揺るがす危機ではなく、対処可能な業務のひとつになる。
これは、単なる守りの話ではない。
契約書がしっかりしている建設業者は、施主からも、元請からも、下請からも、信頼される。「あの会社は、契約をきちんとする」という評価は、地域の建設業界では、何よりの財産になる。大分のような地域では、仕事は人と人のつながりで回っていく。契約をおろそかにしない姿勢は、めぐりめぐって次の仕事につながっていく。
そして、もうひとつ。契約書を整えておくことは、あなた一人のためだけではない。共同経営者や、後継者として会社を継ぐ家族、あるいは経営を見守る顧問税理士に対して、「うちは、この部分の備えはできている」と胸を張って言えるようになる。これは、経営者としての責任を果たしているという、静かな自信につながる。
真面目に現場を積み重ねてきた経営者であれば、契約書を整えることもまた、当然の一手であるはずだ。これまできちんと仕事をしてきたあなたなら、ここを整えない理由はない。
6. まず何から始めればいいのか——リブラ法律事務所にできること
では、具体的に何から始めればいいのか。
結論から言えば、最初の一手は「今使っている工事請負契約書を、専門家に一度見てもらうこと」である。とりわけ、契約不適合責任の条項と免責特約が、改正後の民法と自社の取引実態に合っているかどうか。ここを点検するだけで、見えていなかったリスクの多くが浮かび上がる。
弁護士法人リブラ法律事務所は、大分市に拠点を置き、地域の中小企業の法務を専門に扱ってきた。東京の大手事務所のように一般論を並べるのではなく、大分・九州の建設業の実情——元請と下請の関係、地場の取引慣行、公共工事と民間工事の違い——を踏まえたうえで、あなたの契約書を具体的に点検する。同じ大分で事業を営む者として、相談したその日のうち、あるいは翌日には動ける機動力も、私たちの強みである。
「契約書の見直し」と聞くと、大ごとに感じるかもしれない。だが、実際には、まず一度ご相談いただくところから始まる。その入り口を、できるだけ軽くしておきたい。次の「よくあるご質問」を、ぜひ読んでいただきたい。
7. よくあるご質問(初回相談の前に)
Q1. 初回相談はいくらかかりますか?
30分5,500円(税込)です。Web相談・電話相談も同額でお受けしています。
Q2. 何を準備すればよいですか?
準備は不要です。お手元に契約書や関係する資料がある方は、お持ちいただければ、より具体的なお話ができます。
Q3. その場で契約を迫られませんか?
相談と契約は分けて考えています。初回相談にお越しになる方の約半数は、相談のみで終了されています。
Q4. 社内や取引先に知られませんか?
弁護士には守秘義務があります。経営者ご本人とのやり取りに限定する形で進めることも可能です。
Q5. 相談だけで終わってもいいですか?
もちろんです。約半数の方が相談のみで終了されています。まずは話を聞くだけ、で構いません。
Q6. 下請業者に知られずに、自社の契約書を整備できますか?
できます。契約書や免責特約の見直しは、取引相手に知らせることなく、自社の準備として進められます。
Q7. 元請から不利な契約書を出されているのですが、相談できますか?
もちろんです。下請の立場で受け取った契約書の内容が適切かどうかの点検も、ご相談の重要なテーマのひとつです。
ご相談はこちらから
弁護士法人リブラ法律事務所
所在地:大分市中島中央2-2-2
電話:097-538-7720
FAX:097-538-7730
Email:lybra@triton.ocn.ne.jp
Web:lybralaw.com
・初回相談料:30分5,500円(税込)
・Web相談・電話相談に対応
・相談のみのご利用も可能です
施工不良や契約不適合責任のトラブルは、起きてからでは選べる手が限られます。契約書を整えるなら、何も起きていない今が最良のタイミングです。まずはお気軽にご連絡ください。
8. 共同経営者・顧問税理士にそのまま見せられる要約
| 2020年4月施行の改正民法で、瑕疵担保責任は契約不適合責任に変わり、請負人が責任を問われる起算点が「引き渡しから1年」から「相手が不具合を知った時から1年」へと実質的に拡大した。新築住宅の基礎・雨漏り部分は品確法で引き渡しから10年の責任が強制され、免責特約でも短縮できない。当社の工事請負契約書と免責特約が改正後の内容に対応していなければ、想定外の損害賠償リスクを抱える。大分のリブラ法律事務所(097-538-7720/初回相談30分5,500円・Web相談可・相談のみ可)に契約書の点検を依頼したい。 |
9. 自社の契約書チェックリスト
今の契約書について確認するチェックリストはこちらです。
Last Updated on 5月 28, 2026 by kigyo-lybralaw
事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。 |




