1. 契約書は作成しないといけないか
金額が小さなものや企業内の備品の類を取得する場合は作成しなくとも困りません。しかし、自社の製品等の取引については、たとえ少額でも契約書を作成する癖をつけた方がよいです。その理由は、下記の4つです。
(1)リーガルチェックが可能となる
契約書という形に残しておくと、後日、専門家がその契約内容の良し悪しをチェックできます。この点が大事です(関連記事はこちらから)。
(2)貴社の利益の確保に敏感になる
契約の内容で既に綱引きが始まっています。契約書の案を示してくる取引先は、自社に有利な内容で契約をしたい、という動機があります。企業の中には、契約書の作成がおっくうだとして、インターネットにアップされている契約書のひな形を使うこともあるでしょう。その場合、ひな形は一般的な規定であることが多く、自社にとっての取引実態を反映しているとはいえません。何気ない条項の意味を探り、その契約条項で自社が不利にならないのかと考えることは、貴社が利益の確保により敏感になり、自信をもって契約書を読むことができるようになります。
(3)将来のトラブル回避(合意内容の明確化)
契約条項が自社にとって有利か不利かを検討することは、将来のトラブルを回避することにもつながります。例えば、契約書のひな形には、損害賠償について「損害賠償を請求することができる」とのみ規定されているとか、自社の債務の履行について「当事者間の協議の上決定する」と定めていることがあります。前者の場合、いざ自社に損害が生じたとしても、その額を相手方に認めさせることが困難です。後者の場合は、当事者で協議ができない場合はどうしたらよいのか困ることがあります。困ったときにどうするのかを定めるのが契約書の意味でもありますから、例えば、損害賠償の額を予め決めておくとか、履行方法について協議ができない場合は自社で決めてよし、としておくと、相手方が協力的でない場合にも自社が主導権をもって行動できます。そのことは、将来のトラブルの防止につながります。また、契約書を作っておくと、後に紛争が生じたとしても「その時はその内容で合意ができていた」という証拠になります。この点は結構重要で、当事者の合意内容が形で残っていると、その限度で言い逃れはできません。また、契約条項の文言をきっかけとして、お互いに何をイメージして合意したのかを確認し、誤解を解くこともできます。契約書がないとどういう合意をしたのかさえ忘れてしまいがちです。
(4)法律上の要請
法律上、契約するにあたって、契約内容を記載した書面の作成を義務付ける規定は複数あります。建設業法、特定商取引法、下請法、保険法、金融商品取引法・・・、これらの法律では、書面を作成していないこと自体でペナルティ(行政処分、刑罰対象)を科されることがあるくらいです。
2. 契約書を作成するときの注意点
自社で契約書の内容をチェックするためにはどうしたらよいでしょうか。最近では、契約書の内容をAIでチェックするというサービスもあり、費用をかけられるのであればそれも1つのやり方です。ただ、予算のこともありますので、手っ取り早くその契約の水準的な内容を知りたいのであれば、インターネット上のひな形をみることをお勧めします。ただ、ひな形が万能でないのは上記のとおりです。契約書のひな形を契約書作成の参考にする際には、下記の点に注意してください。
(1)ひな形を確認する場合には複数のひな形を確認すること
例えば、日ごろから自社の契約を「業務委託契約」と呼んでいるから、同じ言葉で検索した結果出てきた「業務委託契約書」をそのまま使用する場合があります。しかし、一口に「業務委託」といっても、何の委託かで契約書の内容は変わります。その結果、取引の実態にそぐわない「業務委託契約書」を持参しても、思ったほど役に立たなかった、ということやよくあります。そうならないために、委託契約、というタイトルのひな形が複数検索できた場合は、その内容を読み比べることが重要です。
(2)過去事例を参照にする
自社の取引に適合するような契約書のひな形がない場合は、過去、作成した契約書を参考にして契約書を作成していくのがよいでしょう。その契約書を用いて取引をしても特に問題が生じなかったのであれば、契約書の内容が自社の取引に合っているとも評価できるからです。もっとも、過去作成した契約書を鵜呑みにできない場合があります。法律改正がなされた場合です。例を1つ挙げますと、昔は、マンションの賃貸借契約の保証人になってもらう場合、契約書に署名押印してもらえば足りたのが、現在は、その保証人に保証してもらいたい額の上限を契約書に書かなければ、保証契約ができていないことになるのです。この例は、令和2年に民法の改正があったためです。いささか極端な例ですが、改正の有無を確認する必要性は大いにあります。
(3)最新の書式を入手すること
例えば、労働契約書は、労働法制が頻繁に変わることから、現在の法令を踏まえた契約書を作成する必要があります。そうでなければ、思わぬ不利益を被ることがあるのです。また、民法が令和2年に改正されたことは周知のとおりですし、自社がインターネット上でビジネスをする場合には「通信販売」として特定商取引法の適用があるところ、同法も頻繁に改正されており、ECサイトに記載すべき事項が変わっていきます。
(4)書式には注意すること
例えば、専門家の目から見ると労働契約であるにもかかわらず「業務委託契約」というタイトルでの契約書を散見します。この場合、企業に悪意がなくとも偽装請負との疑いの目が向けられることがあるばかりか、当然ながら、ひな形は労働法制に対応しない内容となっています。また、貸金契約でも、その返済の仕方にはいろいろありますし、連帯保証人をつけたいのに、そうなっていないひな形もあります。トラブル防止のために、自社が希望する契約書の内容に近いひな形を探し、その内容を忠実に反映した契約書の作成をおすすめします。
3. 契約書に関するトラブルに対する対処法
契約書を交わした場合であっても、契約書の内容どおりに事が進まないことがあります。その場合、よくやるやり方は下記のとおりです。
(1)内容証明郵便で申し出る
内容証明郵便は、送付した文書の内容と配達日付が公的に証明できる郵便方法です。最も確実に自社の主張を相手に伝えられます。例えば、取引の相手方が、履行は可能であるが履行期を過ぎている場合は、相手方に履行を催告し、催告を行なったにも関わらず、相手方が催告期間内に履行を行なわない場合は契約の解除をする、との意思表示を行うことがあります。また、相手方に対して損害賠償請求を内容証明郵便で送付することもあります。 内容証明郵便は、このように、通常のはがきや茶封筒による郵送とは違うことから、相手方にプレッシャーをかけることが可能になります。勿論、自社で内容証明を出してもよいのですが、相手方へのプレッシャーという面では、弁護士が自社の代理人として内容証明を出した方が効果的です。
(2)訴訟手続きを利用する
通常訴訟となる場合、民事訴訟法という民事法廷での特殊なルールがあることから、弁護士に委任しなければ手続が分からない、ということがほとんどです。 また、通常訴訟で勝訴したのち、相手方と交渉し、あるいは、相手方の財産を見つけて財産を差し押さえる、という手段をとることがあります。差し押さえについては民事執行法というルールがあり、この点も、弁護士に依頼しなければ手続が分からないということになるでしょう。ただ、契約トラブルは避けられた方がよいのはいうまでもありません。リブラ法律事務所では、契約書の内容について助言をし、よりよい契約条項を提案することが可能です。 契約トラブルでお悩みの方は、お気軽に当事務所までお問い合わせ下さい。
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Last Updated on 10月 9, 2024 by kigyo-lybralaw
この記事の執筆者 事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。 |