契約書がなくてもOK 工事代金未払いの回収方法とは

契約書 建設業 

0 はじめに

発注者から工事代金が支払われずに困っている施工業者の方から相談を受けます。

契約書がなくても工事代金の請求は可能です。

ただし、証拠を残しておくことが重要です。以下では回収方法をお伝えします。

1 契約書がなくても工事代金は回収できます

建設工事は請負契約です。

請負契約は、仕事の完成、工事代金(報酬)額について合意があれば成立です。

契約書を作らなくともOKです(もっとも、口頭のみだともめるので、紙の注文書、メール、LINEのやり取りなど証拠を残しましょう)。

イメージは下記のとおりです。

見積書や発注書: 工事内容や金額を示す書類。

メールやLINEのやり取り: 契約内容や進捗状況を記録したもの。

工事の完成を示す写真や報告書: 工事が完了したことを証明する資料。

これらの証拠を基に、注文主に対して代金を請求できます。

その他、工事業者側は、仕事の完成や工事代金を示すために契約書がない場合、工事代金の見積書、発注書、請書、進捗記録、完了写真、工事日報、注文主の承諾記録(紙、メール、LINE)を示しながら工事が完成したことを示すことになります。

要は、契約書がなくとも他に契約内容を示す資料があれば大丈夫です。

なお、工事業者側が様々な資料によっても工事代金額を特定できない場合、商法上、商人が営業の範囲内で他人のために行為をしたときに相当な報酬を請求できます(商法512条)。

ただし、この場合、工事業者が望む工事代金額を請求できるとは限りません。

工事代金については注文主とのやり取りの中で何度も明示した方がよいでしょう。

2 工事代金の回収は弁護士に相談を

代金の回収は慣れた弁護士に相談した方がいいです。これから、弁護士に相談するときには何を準備したらスムーズかをお伝えします。

ますは事情を整理するためにメモをしてみましょう。

弁護士への相談には相談料が必要で、その際、これまでの流れがわかるメモがあれば相談時間を短縮することができます(工事に関する資料やメール・LINEがあれば助かります)。

次に、法律事務所に連絡をして相談を予約します。弁護士への法律相談は予約制です。

また、弁護士との相談現場には、これまで、注文者とのやりとりがわかる資料を全てお持ちになった方がいいです。

というのも、工事業者が必要だと考える資料と弁護士が必要とする資料が違うからです。

また、弁護士が気にするのは、その工事がいつ完成したかです。

工事代金の請求権には消滅時効期間があり、その期間を過ぎてしまうと工事代金を請求できなくなるからです。

3 工事代金を弁護士に請求してもらいましょう

普通の弁護士は、契約書を作っていない工事業者から相談を受けた時点で、このような手段を考えます。

手段概要
工事成果物の引き渡し拒否支払いがない場合、成果物を引き渡さないことで
支払いを促す。
契約解除 支払い義務の不履行を理由に契約を解除し、出来高
分を請求する。
内容証明郵便の送付特殊な郵便を利用し、心理的圧力を与える。
法的手続き(支払督促など)裁判所を通じて強制執行を行い、相手の財産を
差し押さえる。

以下で、それぞれの方法を具体的に見ていきましょう。

工事の成果を引き渡さない

工事業者が工事の成果を引き渡していなければ、契約書がなくとも同時履行を求め、工事代金を支払わなければ成果物を渡さない、とすることが可能です。

こうすることで、工事代金の支払いを促すのです。

工事請負契約を解除する

例えば口頭で前渡金、中間金、完成金として段階的に工事代金を支払う合意ができていたのに、支払いを促しても代金を支払わない場合は、義務不履行を理由として工事請負契約を解除することが考えられます。

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工事業者は、請負契約を解除することで、それ以降、工事をする義務がなくなります。

また、工事が完成しなかったとしても、工事業者は注文主に対してそれまでの出来高を請求できますので困ることはありません。

弁護士が代理人として支払いを請求する

弁護士は、通常、工事代金を支払わない注文主に対して、内容証明郵便により未払い工事代金を支払うよう求めます(内容証明郵便とは、いつ・誰が・誰に対して・どのような内容の文書を送付したかを証明できる郵便です)。

内容証明郵便は、日常的には用いられない郵便であり、特殊な郵便が届いたことで、注文主に心理的な圧力を与えることができます。

これまでのやり取りとは違う、という姿勢を見せることは大事です。

弁護士が法的手続き(支払督促、少額訴訟、訴訟)を執る

支払いを請求しても相手にされない場合には、法的手続きを利用します。

「民事調停」「支払督促」「少額訴訟」「通常訴訟」の4つです。

民事調停は、簡易裁判所で話し合いによる解決する手段です。

話し合いではない解決を望む場合は、支払督促、少額訴訟、通常訴訟を行う必要があります。

裁判所で判決や命令を取得するメリットは、相手方の財産に対する強制執行ができる点です。

強制執行をすれば、注文主の財産(預貯金、売掛金、不動産など)を差し押さえて、強制的に工事代金を回収することが可能です。

支払督促等の回収手段の詳細はこちらから。

4 工事代金の回収を早く弁護士に相談することのメリット

工事代金の請求権には時効があるため、早めの対応が必要です。

時効による消滅とは、権利行使をせずに一定期間が経過してしまうと請求ができなくなる制度をいいます。

このため、早めに行動することが重要です。

また、早く弁護士に相談するメリットは下記のとおりです。

代理人として交渉や法的手続きを行ってもらえる

工事業者が、日々の仕事をしながら未払い代金を回収するのは負担です。

また、工事業者は裁判所で法的手続を執ることに慣れておらず、裁判所からの問い合わせに上手に対応できるとは限りません。

弁護士に債権回収業務を任せれば、工事業者は日々の仕事に集中することができます。

財産調査により相手の財産を明らかにできる

弁護士は、弁護士会照会、財産開示手続、第三者からの情報取得手続により、相手の財産を特定することができます。

このことは、迅速に工事代金を回収することに繋がります。

5 まとめ

工事請負契約は、口頭の合意で成立します。このため、契約書がなくとも工事代金を請求することができます。

もっとも、支払いを巡って紛争となった場合、裁判所という第三者を説得するためには証拠が必要となります。

日ごろから、請負代金額については記録しておきましょう。

未払い代金の回収を検討している場合は、早急に弁護士に相談してください。

リブラ法律事務所では、工事代金の回収についてもご相談をお請けできます。

お気軽にご相談ください。

Last Updated on 3月 4, 2025 by kigyo-lybralaw

この記事の執筆者
弁護士法人リブラ総合法律事務所

事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。

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