
- 1. その「不機嫌」、あなたが見て見ぬふりをしてきたもの
- 2. 「うちは風通しがいい」——その実感と、静かに減る人数のあいだ
- 3. フキハラは違法なのか:パワハラ3要件で考える
- 4. 動いた職場が取り戻すもの
- 5. 迷っている今こそ、「認定」より先にすべきこと
- 6. 経営者向け・フキハラ初動チェックリスト
1. その「不機嫌」、あなたが見て見ぬふりをしてきたもの
夜、退職届や面談メモを前にして、スマートフォンで「ため息 パワハラ」「無視 ハラスメント 違法」と検索している——経営者であるあなたが今そういう状態なら、この記事はあなたのために書きました。
あの人は、暴言を吐くわけではありません。手を上げるわけでもない。ただ、機嫌が悪いと露骨にため息をつき、話しかけても画面から目を離さず、ときどき舌打ちをする。朝礼で一人だけ腕を組んで、誰とも目を合わせない。その人の機嫌ひとつで、フロア全体の空気が重くなる。
仕事はできる。むしろ、現場を回す要の一人だ。だからこそ、あなたは何も言えずにきました。
そして最近、若手から打ち明けられたのではないでしょうか。「あの人がいる日は、出社がつらいんです」。あるいは、理由のはっきりしない退職が、ぽつぽつと続いている。面談では「一身上の都合」としか言わないけれど、本当の理由はうすうす分かっている。
この、名前のつかない不快の正体が「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」です。ため息・舌打ち・無視・不機嫌な表情といった態度で、周囲に精神的な負担を与える行為を指し、近年、職場の新しいハラスメントとして取り上げられることが増えました。言葉にしづらかったものに名前がついた、というだけで、少し気持ちが軽くなった方もいるかもしれません。
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2. 「うちは風通しがいい」——その実感と、静かに減る人数のあいだ
おそらくあなたは、これまで「うちは風通しのいい職場だ」と思ってきたはずです。実際、表立った怒鳴り声はない。ハラスメント研修も、ちゃんとやっている。それなのに、なぜか人が辞めていく。その違和感を、うまく言葉にできないまま、ここまで来たのではないでしょうか。
フキハラの厄介なところは、ひとつひとつの場面が「証拠」になりにくいことです。ため息一回、無視一回を取り出して「これがハラスメントです」とは、たしかに言いにくい。本人に問いただしても「ため息くらいついただけです」「無視なんてしていません、忙しかっただけです」と返されれば、それ以上は踏み込めない。
けれど、それを毎日浴びせられる側にとっては、状況はまったく違います。質問しようとすると、あのため息が頭をよぎる。だから聞けない。聞けないから手が止まる。手が止まると、また不機嫌になる。この悪循環の中で、確実に職場が苦痛の場へと変わっていきます。
そして、もうひとつ。あなたは心のどこかで、こう思っているかもしれません。「指摘したら、有能なあの人を失うかもしれない」「逆ギレされて、もっと面倒なことになるかもしれない」「そもそも、曖昧な“不機嫌”を理由に、注意や処分なんてできるのか。過剰反応だと、かえって自分が笑われないか」。
その迷いは、経営者として、ごく当然のものです。あなたが冷たいからでも、判断力がないからでもありません。むしろ、人を大切にしたいからこそ、簡単に誰かを断罪できずにいる。その慎重さ自体は、間違っていません。間違っているのは、「言い切れる根拠がないから、動けない」と思い込んでしまうこと——この点を、次の章で解きほぐします。
3. フキハラは違法なのか:パワハラ3要件で考える
ここから、判断の根拠を一緒に整理していきます。少しだけ法律の話になりますが、難しくはありません。あなたが「動ける根拠」を手にするための整理です。
フキハラとは何か
フキハラは、ため息・舌打ち・無視・不機嫌な表情や態度によって、周囲に精神的な負担を与える行為を指します。暴言や命令という「言葉」ではなく、「態度・空気」で相手を萎縮させる点に特徴があります。本人に明確な悪意がなく、「ただ気分が顔に出やすいだけ」という無自覚なケースが多いのも、この問題が見えにくい一因です。
モラハラ・パワハラとの違いは、「動ける根拠になるか」で見る
フキハラ・モラハラ・パワハラの違いを、辞書のように細かく覚える必要はありません。経営者にとって本当に大事なのは、「それが、自分が動くための根拠になるかどうか」です。その軸で並べ替えると、こうなります。
フキハラは、態度・空気が中心で、本人が無自覚なことも多く、それ単体では違法と断じにくい類型です。モラハラ(モラルハラスメント)は、相手を精神的に支配し追い詰める意図のある言動が継続するもの。そしてパワハラは、法律にもとづく定義があり、3つの要件を満たせば、事業主に防止のための措置義務が及びます。
ここで押さえておきたいのが、パワハラには法律上の根拠があるという事実です。改正労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)により、職場のパワハラ防止措置は、大企業では2020年6月1日から、そして中小企業でも2022年(令和4年)4月1日から義務化されています。つまり、大分の中小企業であっても、すでに防止措置を講じる義務を負っているのです。
一方で、フキハラそのものに直接効く法律は、現時点ではありません。しかし、その態様によっては、パワハラの枠組みで捉えられる場合がある。だから「フキハラだから法律は関係ない」とは言えないのです。
パワハラ3要件への当てはめ
パワハラは、厚生労働省の指針(いわゆるパワハラ指針)により、次の3つの要件をすべて満たすものと定義されています。
- ① 優越的な関係を背景とした言動であること
- ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
- ③ 労働者の就業環境が害されるものであること
この3つを、2つの方向から当てはめてみましょう。
第一に「部下から上司へのフキハラ」型。 実は最近、この型が報道で注目されました。毎日新聞が2025年11月30日に配信した記事によれば、上司が部下の不機嫌な態度(数字の根拠を尋ねると舌打ちされる、意見が対立すると周囲に聞こえよがしに「顔も見たくない」と言われるなど)によって休職に至り、最終的に3万円の慰謝料を支払う和解が成立した、という事案がありました。
ただし、ここは冷静に見る必要があります。これは「和解」であって「判決」ではありません。つまり、裁判所が部下の言動を違法と判断したわけではないのです。報道を拡大解釈して「部下のフキハラはすぐに損害賠償の対象になる」と一般化するのは危険です。3要件に照らせば、部下から上司への言動は、①の「優越的な関係」を満たしにくい。部下が態度で上司を萎縮させたとしても、上司は本来、指導や人事評価を通じて対処できる立場にあるからです。だから、部下のフキハラを直ちにパワハラとして扱うのは、簡単ではありません。
第二に「上司・幹部から部下へのフキハラ」型。 あなたが今直面しているのは、おそらくこちらでしょう。この型は①を満たしやすい。残るは②と③です。
ここで、あなた自身が自分の職場を判定できるよう、目安を言葉にします。②の「業務上必要かつ相当な範囲を超えているか」とは、たとえば——必要な指導の場面でもないのに不機嫌をぶつけている、態度が継続的で誰の目にも明らかになっている、業務に必要な範囲を明らかに逸脱している、といった事情です。③の「就業環境が害されているか」は、その態度によって部下が萎縮し、質問や報告ができなくなっている、体調や勤怠に影響が出ている、複数人が同じ苦痛を訴えている、といった形で表れます。
これらが積み重なれば、「ただの不機嫌」では済まず、パワハラとして評価される余地が出てきます。逆に、一度きりのため息や、正当な指導に伴う厳しさは、これには当たりません。この線引きこそ、専門家と一緒に整理する価値があるところです。
※ここで挙げた当てはめは、職場でよくある場面を想定したモデルケースです。実際の判断は、具体的な事実関係によって変わります。
「認定」の前に、経営者が持つべき2つの視点
ここで、多くの経営者がつまずきます。「ハラスメントだと認定できるかどうか」という入口で、立ち止まってしまうのです。
けれど、あなたが動ける根拠は、それだけではありません。
ひとつは職場秩序の維持です。特定の人物の態度によって、職場の士気と秩序が乱れているなら、それを正すのは経営者の責務であり、正当な権限です。ハラスメント認定とは別の次元で、あなたは指導や注意ができます。
もうひとつは安全配慮義務です。これは労働契約法第5条に明文の根拠があり、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。重要なのは、この「生命、身体等の安全」には、心身の健康も含まれると解されている点です。つまり、精神的な苦痛を与えるフキハラの放置は、まさにこの安全配慮義務に関わってくるのです。
そして、もしフキハラを放置して従業員が心身の不調をきたした場合、会社はこの義務に違反したとして、民法第415条にもとづく損害賠償責任を問われかねません。
放置のコストは、見えにくいだけで、確実に発生しています。フキハラによる離職は「一身上の都合」の影に隠れますが、一人の中堅社員が辞めれば、それまで採用と育成にかけてきた費用も、現場にかかる負荷の増加も、決して小さくはありません。
だから、「ハラスメントと言い切れないから動けない」は、実は誤りです。認定を待たずとも、職場秩序の維持と安全配慮義務という、二つの確かな根拠から、経営者は今日から動けるのです。
4. 動いた職場が取り戻すもの
少し、想像してみてください。早い段階でこの問題を整理し、適切に動いた職場が、どうなるかを。
若手が「この会社は、おかしいことを、おかしいと言える場所だ」と感じるようになる。質問が戻り、報告が戻り、現場の手が止まらなくなる。空気が軽くなって、辞めるはずだった人が残る。そして何より——あなた自身が、朝、職場の空気を恐れずに出社できるようになる。これは、決して大げさな話ではありません。
ここで、あなたが抱えていたもうひとつの不安に、正面から触れます。「自分も、無自覚に似たようなことをしているのではないか」。
その不安を持てること自体が、実は、あなたが気づける経営者である何よりの証拠です。気づけない経営者は、そもそもこの記事を検索しません。自分を顧みる視点を持っているあなたなら、職場を変えられます。
そして、この問題は、あなた一人で抱え込む必要はありません。共同経営者である配偶者や、他の役員、顧問税理士に説明し、納得してもらうための材料は、事実を整理しさえすれば、必ず用意できます。たとえば「特定の幹部の態度によって、この一年で何人が辞め、その採用と育成にどれだけかかったか」「放置した場合に会社が負いうる責任は何か」を一枚にまとめれば、それは感情論ではなく、立派な経営判断の資料になります。本記事の末尾に、そのまま見せられる要約も用意しました。
5. 迷っている今こそ、「認定」より先にすべきこと
結論から言います。フキハラに迷っている今こそ、「ハラスメントかどうかの認定」よりも先に、事実を整理する段階です。そして、その整理は、専門家と一緒に行うのが、最も早く、最もコストが小さい。
なぜなら、フキハラの判断は、一つひとつの場面ではなく「積み重なり」で決まるからです。いつ、誰が、どんな態度をとり、誰がどう影響を受けたか。この事実関係を正しく整理できれば、それが「指導の範囲」なのか「動くべき問題」なのかが見えてきます。そして整理の仕方ひとつで、その後の選択肢——本人への注意、配置の見直し、就業規則にもとづく対応——の打ち手が大きく変わります。
ここで、相談をためらわせている、最後の不安に答えておきます。
「弁護士に相談したら、いきなり大ごとになるのではないか」「あの幹部に伝わって、関係が決定的に壊れるのではないか」——そんなことはありません。最初の相談は、あくまであなたと弁護士の間で、事実を整理し、選択肢を確認するだけです。いきなり本人に通知が飛ぶわけでも、その日から処分が始まるわけでもありません。整理だけして、いったん持ち帰ることもできます。動くかどうかを決めるのは、あくまであなた自身です。
よくあるご質問
Q1. 初回相談はいくらかかりますか?
30分5,500円(税込)です。Web相談・電話相談も同額でご利用いただけます。
Q2. 何を準備すればよいですか?
準備は不要です。面談メモや退職者の記録など、手元に資料がある方はお持ちいただければ、より具体的に整理できます。何もなくても構いません。
Q3. その場で契約を迫られませんか?
相談と契約は分けています。初回相談に来られた方の約半数は、相談のみで終了されています。まず話を整理したいだけ、という段階で問題ありません。
Q4. 社内や、当の幹部本人に知られませんか?
弁護士には守秘義務があります。経営者ご本人とのやり取りに限定する設計も可能で、相談した事実が当の幹部や他の従業員に伝わることはありません。
Q5. 相談だけで終わってもいいですか?
はい。約半数の方は相談のみで終了されます。「動くべき問題か、指導の範囲か」を整理して持ち帰るだけでも、十分に意味があります。
Q6. 「これくらいで相談していいのか」と迷うのですが、軽微でも大丈夫ですか?
むしろ、軽微なうちに整理しておくことをお勧めします。フキハラは積み重なって深刻化するため、早い段階で「事実をどう記録し、どこから対応すべきか」を確認しておくほど、選択肢が広がります。
Q7. 弁護士が入ると、かえって大ごとになりませんか?
なりません。初回は事実の整理と選択肢の確認だけです。いきなり本人への通知や処分が始まるわけではなく、社内対応・指導・就業規則の見直しなど、穏当な手段から一緒に検討します。
ご相談は弁護士法人リブラ法律事務所へ
職場の「不機嫌」が、指導の範囲なのか、動くべき問題なのか——迷ったときは、まず事実の整理から。大分の中小企業の実情を理解し、同日・翌日のご相談にも可能な限り対応します。東京の大手事務所にはない、地元に根ざした距離感で伴走します。
- 弁護士法人リブラ法律事務所(大分市中島中央2-2-2)
- 電話:097-538-7720 / FAX:097-538-7730
- Email:lybra@triton.ocn.ne.jp
- 初回相談料:30分5,500円(税込) / Web相談・電話相談対応 / 相談のみで終了も可能
【稟議・家族相談材料(200字)】
特定の幹部のため息・無視・舌打ちといった「不機嫌な態度」で職場が萎縮し、若手の離職が続いています。フキハラ自体に直接効く法律はありませんが、態様によってはパワハラ防止法の3要件に該当し、放置すれば労働契約法第5条の安全配慮義務違反として会社が損害賠償責任を問われる恐れがあります。認定の前に事実を整理する段階です。弁護士法人リブラ法律事務所(大分市・☎097-538-7720)は初回30分5,500円、Web相談可、相談のみでも対応します。
6. 経営者向け・フキハラ初動チェックリスト
職場の「不機嫌」に気づいたとき、まず確認したい項目のチェックリストはこちらです。
Last Updated on 5月 29, 2026 by kigyo-lybralaw
事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。 |




