「パワハラだ!」と騒ぎ立てる問題職員への対処法とは?弁護士が解説

「パワハラだ!」と騒ぎ立てる問題職員への対処法とは?弁護士が解説

1. 「パワハラだ!」を多用する問題職員という、現代の介護現場固有の難題

結論から書く。

「それ、パワハラですよ!」「いじめじゃないですか!」――こうした言葉を、注意指導のたびに口にする職員に手を焼いている施設長は、決して少数派ではない。むしろ、令和3年度介護報酬改定で全介護事業者にハラスメント対策の実施が義務化されて以降、こうした現象は全国の介護現場で同時多発的に発生している、いわば「時代の症状」と呼んで差し支えない代物である。

そして問題は、この「症状」を放置した時に何が起こるかだ。

公益財団法人介護労働安定センターが2024年7月に公表した「令和5年度介護労働実態調査」によれば、介護職員が直前の介護の仕事を辞めた理由のトップは「職場の人間関係に問題があったため」で34.3%――前年度比で実に6.8ポイントもの増加である。さらにその具体的な内容を見ると、「上司の思いやりのない言動、きつい指導、パワハラなどがあった」が49.3%、「同僚の言動(きつい言い方・悪口・嫌み・嫌がらせなど)でストレスがあった」が38.8%と、人間関係由来の離職が目を覆いたくなる規模で発生しているのだ。

要するに、こういうことだ。介護現場における「パワハラ」「人間関係」というキーワードは、もはや単なる職場内の感情的トラブルではない。離職率を直接押し上げ、人材難をさらに深刻化させ、施設経営の根幹を揺さぶる構造的リスクへと姿を変えている。にもかかわらず――というよりも、だからこそ、と言うべきか――「パワハラだ!」と騒ぎ立てる職員の声に、施設長や主任は過剰なまでに萎縮させられ、本来行うべき業務上の正当な指導すら控えてしまう。

考えてみて欲しい。利用者の安全に直結する場面で、職員が明らかにミスを繰り返している。指導しなければならない。だが指導すれば「パワハラだ!」と騒ぎ立てられる。だから指導を控える。控えた結果、現場の質は下がる。質が下がれば真面目な職員ほど嫌気がさして辞めていく。残るのは「パワハラだ!」と叫ぶ問題職員と、疲弊しきった管理職だけ――この負のスパイラルが、今、大分の、九州の、いや日本中の介護現場で静かに進行している。

だが、慌てることはない。

実は、この問題への対応原則は、すでに法律と裁判例によって、極めて明確に確立されている。本稿は、その原則を具体的な裁判例に即して解き明かし、その上で、「なぜ彼らはパワハラだと騒ぎ立てるのか」という心理構造の核心にまで踏み込んでいきたい。なぜなら、構造を理解せずに対症療法だけを繰り返しても、問題の根は決して絶てないからだ。

▼関連記事はこちら▼

介護現場のグレーゾーンと不適切ケアとは?「虐待に当たる不当な身体拘束」を含め弁護士がわかりやすく解説

利用者からのセクハラがあったらどうするべき?介護現場のセクハラ対策を弁護士が解説!チェックリスト付き

介護業界の引き抜きトラブル~職員による利用者勧誘から事業を守る実務対策~

2. そもそもパワーハラスメントの定義とは何か――客観的判断という鉄則

裁判例の分析に入る前に、まずは原点に立ち返ろう。

厚生労働省が告示した「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)によれば、職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる、

1. 優越的な関係を背景とした言動であって、

2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

3. 労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの

と定義されている。そして、極めて重要なことに、この告示は次のように明確に述べている

「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」、と。

ここに、すべての答えが書いてある。

「パワハラだ!」と騒ぎ立てる職員のほとんどは、上記②の要件、すなわち「業務上必要かつ相当な範囲を超えたか否か」を、自分の主観で判断している。「自分が嫌な気持ちになった、だからパワハラだ」という三段論法だ。だが法律はそうは言っていない。「業務上必要かつ相当な範囲」かどうかは、受け手の主観ではなく、あくまで客観的に判断される――この一点こそが、すべての出発点である。

施設長として、まずこの原則を腹に落としておきたい。「相手が傷ついた」「相手が嫌な思いをした」

これらは確かに考慮要素にはなるが、それ自体がパワハラ成立の決定要因ではない。客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲内であれば、相手がどれほど「パワハラだ!」と叫ぼうと、それはパワハラではない。法律はそう言い切っているのだ。

では、その「客観的に必要かつ相当」とは、具体的にどう判断されるのか。それを示してくれるのが、裁判所の判断、すなわち裁判例である。

3. 裁判例に基づいて弁護士が解説する具体的判断基準

ここからは、大阪府下のある社会福祉法人が運営する介護事業所で発生した事案を扱った判決(大阪地方裁判所令和3年2月25日判決)を題材に、現場で頻発する2つの典型場面について、裁判所がどのように判断したかを見ていきたい。

この事案では、原告(職員側)が上司の様々な言動を捉えて「パワハラだ!いじめだ!」と主張し、損害賠償を求めて法人を提訴した。しかし結論を先取りすれば、原告の主張は裁判所によってことごとく退けられている。つまり、裁判所は「パワハラではない」と判断したのである。

施設長として注目すべき争点を、2つに絞って解説する。

(1)職務上の適正を欠くと判断した業務から担当を外すことはパワハラか?

事案はこうだ。原告はデイサービスの送迎業務に従事していた。ある日、利用者宅で27度設定の暖房が作動していたエアコンを、利用者の同意のもとそのまま作動させて帰った。だが後日、利用者の親族からクレームが入った。原告にはそれ以前にもミスを繰り返していた経緯があり、施設側は「利用者と1対1で対応する送迎業務ではなく、周囲のフォローが効く施設内業務に変える」という判断を下し、原告を送迎業務から外した。

これに対し原告は「必要以上に重いペナルティを課された、パワハラだ」と主張したわけである。

裁判所の判断は、極めてクリアだった。

「原告がエアコンを作動させることに疑問を持ちながらも施設側への相談等を行わず、以前にも相談等を行わずに注意を受けていたことから、被告代表者としては、今回は、利用者に危険が生じなかったとしても、将来のリスクを考えると、1人で介護等の対応を行う送迎業務ではなく、周りがフォローできる施設内での勤務が望ましいと判断したものであって、合理的な判断といえる」――そう認定し、原告の主張を全面的に退けた。

ここから施設長が学ぶべき教訓は明白だ。担当業務を外す際の判断基準は、「将来の利用者リスクを回避するために、客観的に見て合理的か」――この一点に尽きる。そして、その判断の合理性を支える背景事情、すなわち「以前にも同種のミスがあった」「相談・報告のルールを守らなかった」といった事実を、日頃から記録し、積み上げておくことが、いざ訴訟となった際の決定的な防衛線になる。

逆に言えば、感情的に「あいつは気に入らないから外す」式の処分は、たとえ結果的に正しい配置転換であったとしても、客観的合理性を欠くと判断され、パワハラ認定されるリスクを孕む。判断する前に、その理由を言葉で明確に説明できるか、職場の他のメンバーに違和感なく理解してもらえる説明か――この自己点検を必ず行って欲しい。

(2)シフトに無い業務を担当させることはパワハラか?

もう一つの争点を見よう。

労務問題/契約書/クレーム対応/債権回収/不動産トラブル/広告表示/運送業・建設業・製造業・不動産業・飲食業・医療業・士業の業種別トラブル等の企業の法務トラブルは使用者側に特化した大分の弁護士にご相談ください

原告はリーダーから、シフトに記載のない入浴介助を頼まれた。原告が「シフトどおりに動きたい」と伝えたところ、リーダーは「原告は送迎業務が無いし入浴の介助はしても当たり前ではないか」と返した。原告はこれを「嫌がらせ、いじめ」と主張した。

裁判所の認定はこうである。「原告の勤務状況や他の従業員の勤務状況を見て、原告のシフトにない業務を命じること自体は業務指導の範囲を超えるものではなく、リーダーが上記発言を行ったとしても、それが嫌がらせ、いじめに該当するものではない」。

ここでも、原告の主張は退けられた。

これは、介護現場の本質に関わる極めて重要な判決である。介護というサービスは、本質的にチームプレイであり、職員間の相互協力なしには1日たりとも成り立たない。職員が施設に対して負う「労務提供義務」の中身は、単に「シフトに書かれた業務をこなす義務」ではない。「職員同士が連携し、協力しながら介護サービスを提供する義務」――ここまでが、労務提供義務の本質的な内容に含まれている。

「シフトに無いことはやりません」という主張は、一見、労働者の正当な権利主張に見える。だが、業務上の必要性があり、かつ相当な範囲内であれば、シフトに無い業務を命じることは何らパワハラに該当しない。これは、施設長が現場で繰り返し直面する場面に対する、極めて実践的な指針である。

ただし、注意は必要だ。業務上の必要性が全くないのに、シフトを完全に無視して特定の職員にばかり業務を押し付けたり、介護業務とまったく関係のない雑用ばかりをやらせたりすれば、それは「嫌がらせ」と認定される余地が出てくる。あくまで「通常予定される業務に従事させることが前提、その上で助け合いが必要な場面でシフト外の業務に従事させる」――この枠組みを外さなければ、心配は要らない。

4. 「パワハラだ」と騒ぎ立てる職員の心理構造――施設長が知っておくべきこと

ここからが、本稿の核心部分である。

裁判例を学び、客観的判断の原則を腹に落とし、対応の枠組みを整える――それは確かに必要だ。しかし、それだけでは現場の苦しみは半分しか解決しない。なぜなら、「パワハラだ!」と騒ぎ立てる職員は、騒ぎ立てるそのこと自体に、本人なりの切実な意味を見出しているからだ。その心理構造を理解しないまま対症療法だけを繰り返しても、根は絶てない。

少し立ち入った話をする。

人は、なぜ「パワハラだ!」と過剰反応するのか。それは多くの場合、自分が本当は「指導される側にいる弱者である」という現実を、認めたくないからである。

考えて欲しい。自分が業務上のミスを犯した。それを上司に指摘された。冷静に受け止められれば「ご指摘ありがとうございます、改善します」で終わる話だ。だがそうは行かない人がいる。「自分は劣った職員だ」「自分はミスをした」――その事実を直視することが、何よりも辛い。なぜならその直視は、社会の中での自分の位置づけ、すなわち「自分は職場の中で下位にいる、指導される立場の人間である」という、見たくない現実と向き合うことを意味するからだ。

だから彼らは、攻撃の矛先を反転させる。「指導された自分が悪い」のではなく「指導してきた上司こそが悪い」――そう構図を逆転させることで、自らの弱者性を覆い隠そうとする。「パワハラだ!」という叫びは、このとき、極めて便利な道具になる。なにせ「パワハラ」という言葉さえ持ち出せば、瞬時に自分は「被害者」となり、上司は「加害者」となる。下位にいたはずの自分が、一気に道徳的優位の立場へと跳ね上がる。これほど都合のいい武器はない。

つまり、「パワハラだ!」と騒ぎ立てる行為の本質は、被害申告ではない。「自分は弱者ではない」「自分は不当に虐げられた被害者であって、本来あるべき立派な立場の人間なのだ」と、自分自身に対して、そして周囲に対して、必死に証明しようとする防衛機制なのである。

ここを理解すると、対応の方針が変わる。

ここで施設長として絶対にやってはいけないのは、彼らの「被害者ストーリー」に乗ってしまうことである。事を荒立てたくないから、と謝罪してしまう。「気を付けます」と言ってしまう。それをやった瞬間、彼らの中では「やはり自分は被害者だった」「自分の判断は正しかった」という認識が固定化され、以降あらゆる注意指導に対して「パワハラだ!」が発動するスイッチが完全に作動するようになる。

逆に、必要なのは何か。淡々と、しかし揺るぎなく、客観的事実と業務上の必要性に基づいて、ものを言い続けることだ。「あなたが嫌な気持ちになったことは理解する。しかし、この指導は業務上必要かつ相当な範囲内のものである。したがって、これはパワハラではない」――この姿勢を、感情を交えず、淡々と、繰り返し示し続ける。これしかない。

そしてその「淡々と揺るがぬ態度」を施設長が貫くために、伴走者として弁護士が必要なのである。

5. 大分・九州の介護現場で問題社員対応に弁護士を活用するメリット

ここで、大分・九州エリアで介護施設を運営する経営者の皆様に、特に強調しておきたいことがある。

問題社員対応において弁護士に相談するメリットは、東京や大阪の大事務所に依頼することと、大分の地域弁護士事務所に依頼することとで、まったく性格が異なる。前者の強みは規模と判例蓄積だが、後者の強みは「現場感覚と即応性」にある――そして、介護現場の問題社員対応において本当に効くのは、後者のほうである。

なぜか。

第一に、介護現場の問題は、ほぼ例外なく時間との戦いだからだ。「パワハラだ!」と騒ぎ立てる職員が他の職員にまで影響を及ぼし始めると、優秀な職員から先に辞めていく。その兆候を察知してから動くのでは遅すぎる。同日中、遅くとも翌日中に弁護士と相談し、初動の方針を固められる体制こそが、現場の崩壊を食い止める最大の防波堤になる。大分市内、あるいは九州管内であれば、対面での初回相談から書面作成まで、東京の事務所には到底真似のできないスピードで動ける。

第二に、介護事業者特有の地域構造の理解である。大分県のように、施設経営者同士の人的ネットワークが緊密な地域では、職員のトラブルが地域内の評判に直結しやすい。SNS時代になってからは、なおさらだ。地域の人材市場の構造、地元の労働基準監督署の運用傾向、地元裁判所の判断傾向――こうした地元事情を踏まえた助言は、東京の大事務所では到底提供できない種類の付加価値である。

第三に、これは案外見落とされがちな点だが、「経営者が一人で抱え込まずに済む環境」を持つこと自体が、施設長の精神的負担を劇的に軽減する。問題職員対応は、対応する管理職にとって、想像を超えるストレスをもたらす業務だ。誰かに「それは業務上必要かつ相当な範囲に留まる対応です、問題ありません」と言ってもらえるだけで、現場で踏ん張る力は何倍にもなる。

リブラ法律事務所は、大分市中島中央に拠点を置き、大分県・九州エリアの中小企業、なかんずく介護・医療・運送・建設・不動産・IT・宿泊などの実業界に伴走する地域密着型の事務所である。「同日相談・翌日対応」を基本姿勢として、現場の只中にある経営者の皆様の即応ニーズに応えてきた。

6. 介護施設における問題社員対応でお困りなら、リブラ法律事務所へ

「パワハラだ!」と騒ぎ立てる職員への対応は、感情を排し、客観的事実に基づき、淡々と粛々と進めるしかない。だが、それを一人でやり続けることは、現実には極めて困難である。だからこそ、伴走者が必要なのだ。

リブラ法律事務所は、紛争が起きてから動く事務所ではない。日常的な労務管理の場面――問題職員への注意指導の文面、配置転換の理由付け、就業規則の整備、ハラスメント相談窓口の設計――こうした「予防」の場面から、訴訟になった場合の対応まで、ワンストップで伴走する。2026年10月から義務化されるカスタマーハラスメント対策措置への対応も、同じ枠組みの中で支援可能だ。

問題職員への対応で深い眠りを失っている経営者の皆様、現場が荒みかけて言葉を失っている施設長の皆様、まずは一度、お話をお聞かせ頂きたい。

電話一本、メール一通で、対応への第一歩を踏み出せる。それが、地元・大分の弁護士事務所を持つことの本来的な意味であるはずだ。

7. 【施設長向け】問題職員対応チェックリスト

問題職員対応に取り組む前に、こちらのチェック項目を確認してください。すべての項目に「□」を入れて取り組めば、対応の客観的合理性が大幅に高まります。

Last Updated on 4月 28, 2026 by kigyo-lybralaw

この記事の執筆者
弁護士法人リブラ総合法律事務所

事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。

労務問題/契約書/クレーム対応/債権回収/不動産トラブル/広告表示/運送業・建設業・製造業・不動産業・飲食業・医療業・士業の業種別トラブル等の企業の法務トラブルは使用者側に特化した大分の弁護士にご相談ください
お気軽にお問い合わせください TEL:097-538-7720 受付時間 9:30~17:00 弁護士法人リブラ法律事務所 お気軽にお問い合わせください TEL:097-538-7720 受付時間 9:30~17:00 弁護士法人リブラ法律事務所 メールでのお問い合わせ