懲戒解雇とは?大分県下の事業者に注意してポイントについて弁護士が解説!

懲戒解雇とは?大分県下の事業者に注意してポイントについて弁護士が解説!

「自分の言うことを聞かない労働者は懲戒解雇!」

「警察に逮捕された労働者は即懲戒解雇!」という使用者はとても多いです。

でも、ちょっと待ってください。そう簡単に懲戒解雇はできません。

失敗しないために、この記事に目を通してください。

懲戒解雇とは?

懲戒解雇は、使用者が労働者に対して科すことができる懲戒処分の1つです。

その性質は、使用者が労働者の事業秩序に違反する行為に対する制裁です。

つまり、使用者が有する「企業秩序を策定し維持する権限」に基づいて、当該秩序に反する行動をとった労働者に対する刑罰、とお考え下さい。

懲戒解雇はどんな場合に可能か

就業規則に、労働者を懲戒解雇できるという規定があればこれをなしうるのはいうまでもありません。

では、使用者が就業規則に懲戒解雇に関する規定を設けていない場合は懲戒

解雇できないのでしょうか。この点、懲戒処分は企業秩序定立の一環として、当然に使用者が有する権利であるとする裁判例があります。しかし、労働契約法15条は下記のとおり定めています。

使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

この意味は、使用者が労働者に対して懲戒権限を有する場合でも、その懲戒が第三者からみてやりすぎであれば懲戒処分が無効となるものです。その判断にあたり、就業規則に懲戒解雇に関する規定がない、あったとしても懲戒解雇事由が抽象的にしか書かれていない場合は、懲戒権の濫用と判断される可能性がより高まります。ご注意をお願いします。

懲戒解雇と普通解雇はどう違う?

懲戒解雇がいわば刑罰であるのに対し、普通解雇は、職場が、その労働者の労務提供が義務不履行であるとして解雇するものであり、約束違反に基づくものだと理解できます。普通解雇の解雇理由としては、能力不足、私傷病による心身の疾患、勤労意欲や協調性の欠落等により、職務の遂行に支障を来していることが、内容の主たるものといえます。

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懲戒解雇の要件と具体的事由

先にご覧になった労働契約法第15条は、使用者のなす懲戒処分が濫用といえれば処分が無効になる、濫用といえない場合は処分が有効になると規定しています。ここで、濫用か否かは、概ね下記基準で判断されます。

 ・就業規則上の懲戒規定の有無

 ・懲戒規定がある場合、労働者のある行為が懲戒事由にあたるか

 ・懲戒事由にあたっても、懲戒解雇は他の事例と比較してやりすぎでないか

 ・懲戒処分に至る手続が正当か

また、懲戒解雇の可否が問題となるケースは、従業員が下記行為を行った場合です。

 ・職務上の怠慢

 ・職務上の態度が悪い(ハラスメント行為を含む)

 ・犯罪行為(職場での犯罪と職場でない場所での犯罪)

 ・業務命令違反(転勤、出向などを拒んだ場合)

一般論としては、上記の各行為が存すれば懲戒解雇をなしうる場合があるものの、その行為が解雇をもって罰するほどではないと裁判所が判断した場合は懲戒権の濫用として懲戒解雇が無効となります。また、その行為のみで懲戒解雇が可能となるのは、犯罪行為が絡む場合とお考え下さい。

冒頭でも述べたとおり、懲戒解雇は簡単ではありません。それに、労働者側も解雇となれば生活の糧を奪われるため、簡単に引き下がることはありません。懲戒解雇は、あくまで例外的な措置とお考え下さい。

懲戒解雇の具体的手続

ここでは、犯罪行為を理由としない懲戒解雇の手続を見ていきます。

まずは、使用者から労働者への注意指導です。その労働者が、自らの言動や態度を反省させ、行動の改善を促すような指導をなすことが重要です。ここで、指導の方法は、口頭でも書面でもLINE等のデジタルな手段でも構いません。

ただ、使用者が指導したことを形に残さなければなりません。労働者側から、そんな指導は受けていない、と反論されるからです。

次に、労働者が、使用者から注意指導を受けても態度が改まらない場合は、いきなり解雇を選択するのではなく、もう少し軽い処分(戒告や譴責)を行い、処分回数を重ねていくようにしましょう。使用者側が解雇を避けたくて軽い処分としているのに、労働者が態度を改めない、という状況を設定するためです。また、懲戒解雇をなす場合は、労働者に懲戒解雇を通知しなければならず、その際、労働者のどの行為がどの懲戒事由に該当するかを明示する必要があります。

更に、懲戒解雇をなす前に、労働者に弁明の機会を付与すべきでしょう。労働者が弁明をしなければ、弁明しないことを前提に処分をしてもよいです。

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なお、懲戒解雇の場合、30日前に解雇予告をするか、解雇予告手当を支払う必要があります(労働基準法20条1項)。実際には解雇予告手当を支払って即解雇することが多いでしょうし、できる限りそうすべきです。

労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合であれば、解雇予告をすることも、解雇予告手当を支払うことも不要ですが、その場合、労働基準法第19条2項により、行政官庁の認定を受けなければなりません。この点は注意をしてください。

大分の弁護士ができること

私が過去に携わった事例では、ほとんどの場合、懲戒解雇に失敗しています。

失敗の原因は様々あるところ、1つ言えるのは、使用者が労働者を懲戒解雇することに全く慣れていないということです(当たり前ですが)。

また、大抵の場合、段階を経ずにいきなり懲戒解雇とするために労働者の反発を招き、解雇無効との主張を許すことになります。

ここで、使用者が懲戒解雇に失敗した場合、下記のリスクが生じます。

・職員が職場復帰できる

・バックペイの支払いを余儀なくされる

・慰謝料の支払いを余儀なくされる場合もある

懲戒解雇に失敗すれば雇用契約が存続するのですから、職場復帰は当然です。

また、懲戒解雇に失敗すれば、使用者は、労働者が実際に仕事をしなくとも、賃金相当額を毎月支払わなければなりません。というのも、使用者が、労働者の労務提供を拒んでいたことになるからです。

更に、無効な懲戒解雇を行ったことで労働者が精神的苦痛を受けたとして慰謝料の支払いを余儀なくされることもあります。労働者にとって懲戒解雇は自分のプライドを傷つけられるものであることから、額はともかく、慰謝料請求は通りやすい主張です。

このようなリスクが高い懲戒解雇であるために、慎重にことを運ばなければなりません。しかし、使用者は日々の仕事があることから、懲戒解雇に向けた準備を積み重ねることも、今のやり方で将来的に懲戒解雇が可能なのかの判断もつかない状態ではないでしょうか。

このため、懲戒解雇を意識する労働者がいる場合は、早めに弁護士に相談すべきです。労働者を指導する段階から弁護士が関与することで態度が改まれば使用者にとってもよいことですし、感情的にならずにすみます。

弁護士ができることは下記のとおりです。

・使用者が問題視する労働者の勤務状況を確認し、懲戒解雇の可能性を助言する

・労働者にどういう指導をしたらよいか、どういう風に記録をすればいいかを助言する

・実際に紛争が生じた場合、使用者に代わって労働者と交渉する

・万が一、訴訟提起された場合にも訴訟代理人弁護士として使用者の代わりに法廷活動を行う

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また、リブラ法律事務所では単発での懲戒解雇対応相談もお伺いいたしますが、貴社の顧問弁護士に就任して活動することをお薦めしています。顧問弁護士の役割についてもコラムを作成しておりますので、是非、ご確認下さい。

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Last Updated on 4月 4, 2024 by kigyo-lybralaw

この記事の執筆者
弁護士法人リブラ総合法律事務所

事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。

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