1.弁護士への依頼を検討すべきクレーム
クレーム対応の基本は、顧客の主張を十分聞く等して怒りを静め、顧客の気持ちが落ち着いた段階で解決策を提示する、というものです。このような丁寧な対応を心がければ、大抵のクレームはそこで解決できます。ただ、下記のようなクレームは、顧客の話を聞くだけではおさまりがつきません。このような経験はありませんか。
・自社に落ち度があり顧客に損害が生じて賠償請求された場合
・電話、メールで際限なく要求が続く場合
・些細なミスから過大な要求がなされ、しかも要求が繰り返される場合
・「上を呼べ」「社長を出せ」等、商品やサービスの内容ではなく
責任者による対応を要求するケース
このようなケースに遭遇した場合、心がけることは、対応を切り替えることです。端的にいえば「ルールで解決」すると組織として方針転換することが大事です。というのも、上記の場合はどのケースも「顧客の納得」がその場で得られそうにないからです。企業としてこのような場合に目指すのは「顧客の納得」ではなく、組織としてこれからは「ルール」で解決することを速やかに顧客に示すことです。
2,クレーム対応の代行を弁護士に依頼するメリット
以下の点があげられます。
(1)法律のルールに基づく対応ができる
企業は顧客を大事にするよう教育を受けていますので、クレーム対応が顧客を大事にするという観点からなされやすく、そのことがかえって顧客の慢心を呼ぶことがあります。また、ルール上こうなっている、ということを企業が告げても「誠意に訴えている」「倫理観の問題」等と、話を勝手に顧客の土俵に乗せて許されると誤解されがちです。しかし、弁護士がその企業の代理人としてルールを説くと、話し合いの内容がルールをベースにしたものとなります。
(2)顧客の対応を変えることができる
弁護士が、法律と裁判例のルールに基づいて顧客と話をすることで、顧客も、お店に対する対応とは異なる対応を意識し、クレームの内容を限定せざるを得なくなります。
(3)抜けのない示談が可能
顧客のクレームが法的に正当で、企業が賠償責任を負うとしても、その件については解決済み、とするために、示談を成立させる必要があります。示談書を作成する際に、合意書の内容が法的にみて不十分だと、後日、同様のクレームが繰り返される可能性があります。この点、弁護士には示談に関する専門的なノウハウがありますので、紛争の蒸し返しを防止する示談書を作成できます。
(4)企業が本来業務に打ち込める
企業の従業員は、顧客へのクレーム対応に疲弊します。また、複数の従業員が巻き込まれ、事業所の複数の従業員の手が止まることもあります。そうなると、本来業務に支障が生じることは間違いありません。
顧客からのクレームは何とか自分で対応したいという気持ちはわかるのですが、その対応が、却って顧客をいらだたせるあるいは増長させることがあり、結果、クレームが解決できなくなる可能性があります。
自社で対応が困難なクレームは、早々に見切りをつけ、弁護士に依頼することが、本来業務に対するロスをなくします。顧客からクレームをつけられた従業員が、一様に「今後、そのクレームは自社の弁護士が対応するので、弁護士宛に連絡してください」と伝え、依頼を受けた弁護士も、今後一切の連絡は弁護士宛てにするようクレーム客に通知し、それを破るようなことがあれば何度でも注意します。
(5)ストレスから解放され、職場環境を改善できる
その顧客の対応を専ら弁護士に任せられることで、従業員に精神的な安心をもたらすことは間違いありません。職場環境の改善という好循環が生じます。
(6)弁護士に対応を任せないことのデメリット
度を越えたクレームをなす顧客の問題は、近時「カスタマーハラスメント」としてメディアで取り上げられています。
組織として度を超えたクレームは弁護士に対応してもらうという手順が確立しておらず、担当者任せとなっている場合は、一刻も早く組織として対応するための手順を作成し、従業員に周知することが必要です。そうでなければ、顧客への対応指示が不適切な場合、企業としての責任を問われることもあります(従業員に対する安全配慮義務違反)。
実際、小学校の校長が理不尽に謝罪を求める保護者への対応として、現場の教員に謝罪するように指示した事案について、教員の自尊心を傷つけ、多大な精神的苦痛を与えたと判断して、賠償を命じた裁判例があります(甲府地裁平成30年11月13日)。
ただ、度を超えた要求をする顧客への対応を組織的なものしてマニュアル等を作成するには時間もかかります。このため、度を超えた要求をする顧客への対応は弁護士に依頼することが適切です。
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3,弁護士に依頼した後のクレーム解決までの流れ
(1)弁護士からその顧客に対して引き受けたことを連絡する
弁護士から顧客に対し、その件は自分が受任した、との連絡を入れます。連絡内容は、自分が企業から依頼を受けて、交渉窓口となったこと、今後、一切の連絡は、弁護士宛てにするように、というものです。
(2)顧客からの要求が正当かどうかを判断する資料を提出してもらう
弁護士がその顧客と「法律のルール」で対応するためには、まず、事実関係の正確な把握が不可欠です。このため、顧客が要求する根拠となる資料を求めていきます。私の経験上、弁護士の対応をなじる顧客もいます。ただし、例えば損害賠償請求だと、損害が発生した等の資料はクレームの正当性を主張する側が提出するものです。ですので、弁護士は、顧客に対して資料を提供するよう求めるのです。
(3)顧客から提出された資料をもとに弁護士と依頼企業が打ち合わせる
まずは、依頼者である事業者との打ち合わせを行い、弁護士が顧客からの資料提供を受けて想定する解決策を提案してよいかを決めます。勿論、弁護士が顧客の言いなりになるのではなく、出された資料が正当であれば、顧客のクレームは正当であることが多いため、法律的な解決策を打ち合わせるのです。
(4)顧客に解決策を提示する
顧客が、弁護士の示した案で納得するなら示談書を作成して紛争を解決します。
その顧客が、弁護士の提示した解決策に納得しない場合は、法的に、その解決策が妥当であることをなおも説明し、それでも顧客が納得しないのであれば、適切な対応、適切な解決案の提示をしたとして、事業者側からの対応を終了することもあります。その場合、顧客が訴訟等の法的な手段を検討する可能性があります。その場合は、弁護士が訴訟対応することとなります。
4,弁護士にクレーム対応やクレーマー対応を依頼する方法
下記は、弁護士にクレーム対応を依頼するための手順です。
(1)クレーム対応やクレーマー対応に強い弁護士の選び方、探し方
顧問弁護士がいる事業者は、まず、その弁護士に相談しましょう。
顧問弁護士がいない場合は、自社のクレーム対応やクレーマー対応を依頼する弁護士を探す必要があります。勿論、クレーム対応に長けた弁護士を探す必要があります。
(2)できるだけ事業所と同じエリアの弁護士を探す
現在は、コミュニケーションツールとしてZoomの活用が多くなって来ました。また、弁護士は、その顧客との対応を手紙や電話で行うので、弁護士と顧客が会って協議をする必然性はありません。
ただ、その顧客がどういう対応をするか分かりません。もしかしたら、弁護士が緊急対応をなす事案も発生しかねません。そんなとき、弁護士が近くにいる方が何かと安心でしょう。
そんなわけで、私は、クレームをつけられた事業所と同じ地域の弁護士に依頼する方がよいでしょう。
(3)担当者との面談にあたり
初回相談では、その顧客からとの対応経緯を弁護士に伝えて欲しいです。
そのため、以下の項目を意識して予め準備していただけるとありがたいです。
・クレーム客による購入経緯
・クレーム客の購入内容
・クレームが起きた経緯
・自社でクレーム内容について調査した場合はその調査結果
・クレーム客から資料の提出を受けた場合はその資料
・クレーム客の要望
初回相談の結果、弁護士が対応する必要がない事案もあります。その場合は、対応方法をご説明します。
(4)費用の確認
依頼する場合の弁護士費用は遠慮なく確認してください。
5.クレーム対応についてお悩みの方は弁護士にご相談ください
度を超えた要求をなす顧客には、無理をせずに、早期に弁護士への依頼をご検討ください。リブラ法律事務所はクレーム対応の経験もあり、安心できる法律事務所です。
Last Updated on 3月 6, 2024 by kigyo-lybralaw
この記事の執筆者 事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。 |