大分県下にある会社の従業員の中には、インターネットやSNSを利用して自社を誹謗中傷する者がいます。会社は、そのような問題社員に何ができるでしょうか。
1自社の誹謗中傷は放置できません
その理由は
・他の従業員が不安になり、仕事に身が入らない
誹謗中傷投稿を信じてしまう従業員がいるからです
・自社の信用が低下する
取引先が誹謗中傷投稿を信じてしまうことがあるからです。
しかも、誹謗中傷投稿を放置すると、その情報が拡散すし、
根も葉もない投稿が「ネット上の真実」になってしまうからです。
そうなると、回復できない損害が生じます。
・人材確保も困難となる
昨今の就職希望者は、インターネットでその企業の評判を確認してから
応募するのがスタンダードです。就職希望者はその企業のことを詳しく
知らないので、誹謗中傷投稿を鵜呑みにしてしまいます。
これでは、その企業への応募をしなくなります。
いかがでしょうか、自社への誹謗中傷投稿を放置すると悪影響が増大して
いくのです。
ただ、インターネット上の誹謗中傷投稿は匿名でなされることが多いため、
まずは、その投稿をインターネット上から削除することが先決です。
では、誹謗中傷投稿を削除するにはどういう手段があるでしょうか。
2誹謗中傷投稿を任意に削除できるか
まず、投稿サイトの運営会社に対し、直接、削除を求めることが考えられます。
投稿サイト運営会社が自主的に削除することもあります。しかし、運営会社側が削除について明確なルールを持っているかどうか分からず、また、運営会社側がルールの運用を開示するとは限りません。皆様は、ユーチューバーが、理由も分からないまま広告を制限されたとか動画を削除された、という話を聞いたことがありませんか。
このように、運営会社に任意削除を求めても削除してくれるとは限りません。
3誹謗中傷投稿を裁判で削除する方法(投稿削除の仮処分)
裁判所に対して、その投稿の削除を求める手続を申し立てることができます。
申立て手続の内容ですが、一般的には、民事訴訟よりも迅速に削除が可能な「仮処分手続」を申し立てることが多いです。
もっとも、必ず仮処分手続で削除が認められるとは限りません。
まず、その投稿により自社の名誉が違法に侵害されていることです。具体的には、投稿者には表現の自由という権利があるとしても、その投稿による名誉毀損の度合いが受忍限度を超えている必要があります。
その結果「(自社の)雰囲気が悪い」、「(自社は)残業が多い」との表現では、受忍限度を超えた名誉毀損であるとはいい難く、その投稿の削除請求が認められる可能性は低いです。
また、その投稿が「投稿者の意見表明」という、ある事実に対する評価(お店の評判と同じ)と判断された場合は、投稿の削除請求が認められません。投稿者
の主観の表明であり、そのこと自体が誹謗中傷とは言いづらいからです。
他方、誹謗中傷が虚偽の事実に基づく場合は、仮処分が認められることが多い
です。
次に、その投稿が受忍限度を超えているとしても、削除請求が認められるためには、会社が、その投稿の目的が公益目的でないこと、あるいは、その投稿が
真実ではないこと、を証明しなければなりません。ただし、この要件については、
上記の要件を満たせば証明できることが多いです。
これらの条件を満たせば、仮処分手続でその投稿を削除するよう命じる決定がでます。申し立ててから決定が出るまでの期間は、判断が早い裁判所の場合、申立てから1か月で決定がでることもあります。
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4誹謗中傷投稿をした者を特定する方法
裁判手続は、申し立てる側が相手を特定しなければならなりません。では、
匿名でなされた誹謗中傷投稿の投稿者を特定することができるでしょうか。
特定する方法は下記のとおりです。
まず、SNS運営会社あるいはサイト運営会社に対して、発信者情報(その投稿に近いログイン時のIPアドレス)の開示を求める裁判(仮処分)を行います。
次に、SNSあるいはサイトの運営会社から発信者情報が得られたら、ログイン時の通信を媒介したプロパイダ(NTTドコモやソフトバンク等)に対し、発信者情報(その回線契約者の名前・住所等)の開示を求める裁判を行います。
つまり、まずIPアドレス(接続端末の識別符号)を特定した後、具体的な投稿者の情報を求め、投稿者を特定するという、2段階の裁判が必要になります。
なお、誹謗中傷投稿がなされたのがインターネット上の転職サイトである場合には、サイト上にある開示請求(ウェブフォーム等からの請求)により、発信者の情報が開示される場合もあります。
誹謗中傷投稿をした投稿者を特定するための裁判をなすにあたっては注意
すべき点があります。
1つ目は、その投稿が、自社にとって嫌な投稿という程度ではなく、自社の社会的信用を低下させるような虚偽の事実が書き込まれた、あるいは程度を超えた侮辱である、といえる必要があります。
2つ目は、裁判を早く行うことです。
インターネットプロパイダにおけるIPアドレスの保存期間は3か月から6か月であるといわれています。そのため、迅速に裁判を申し立てなければ、IPアドレス情報が保存されていない(手遅れ)ということになりかねません。
この点、プロパイダ責任制限法が改正され、発信者情報開示命令という、新たな裁判手続が創設されました。発信者の特定をより簡易迅速に行うため、プロパイダの協力を前提とし、上記の2段階の手続を一つにしたものです。
いずれにしても、手続を早く行う必要があることは間違いありません。
5自社の従業員が誹謗中傷投稿を行った場合の対応
まず、誹謗中傷投稿をインターネット上から削除したうえで、次に考えるのは
その従業員への対処です。
会社は、その従業員に下記の措置を執ることが考えられます。
・懲戒処分
就業規則の服務規律で情報発信に関する定めがある場合や、その投稿自体
が名誉棄損罪や信用棄損・業務妨害罪にあたる場合は、懲戒処分が可能です。
自社の就業規則をご確認いただく必要がありますね。
・損害賠償請求
会社に損害が生じた場合は、雇用契約上の誠実義務違反として損害賠償を
請求することが可能です。
・警察への被害届提出、告訴状提出
どのような手段をとるにしても、証拠の確保は必須です。
投稿は簡単に削除できるので、速やかに証拠を確保しましょう。確保の方法は、印刷してもPDFファイルにしてもよいですし、スクリーンショットでも
大丈夫です。
6まとめ
誹謗中傷投稿をなされた際、会社が執りうる方法は上記のとおりです。
しかし、会社が、本来的業務を処理しながら上記の業務を行う人的・時間的
余裕がないことも多いです。この点は、社内処分をする場合も同じで、社内処分をやり慣れていないため、ますます、人的・時間的余裕がありません。
リブラ法律事務所では、会社の誹謗中傷投稿がなされた場合、下記のような
対応が可能です。
・誹謗中傷が含まれる投稿に関する裁判外の削除手続の
・誹謗中傷が含まれる投稿に関する発信者情報特定のための裁判手続
・誹謗中傷投稿をなした社員に対する懲戒処分等
・社内研修の実施
リブラ法律事務所では、顧問契約(企業法務)をお薦めしています。とりわけ、誹謗中傷投稿が社員によりなされた場合は、会社運営に不満があることが動機であることも多く、弁護士が継続的に関わった方がよいからです。
誹謗中傷投稿にお悩みの経営者の方は、是非、リブラ法律事務所までご来所
ください。
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Last Updated on 5月 15, 2024 by kigyo-lybralaw
この記事の執筆者 事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。 |