工事を完成させたのに工事代金がもらえない、という経験はありませんか。
手をこまねいていると、他の業者や社員への支払いができないばかりか、資金
繰りも悪くなります。自力での回収にお困りであれば、このコラムを参考にしてください。
施主の工事代金の未払いの回収方法とは?
工事代金の未払いが生じた場合、普通はこのようなやり方で回収を図るかと存じます。
・施主に対する未払いの理由確認
・施主との間で直接交渉して支払ってもらうように努力する。
しかしこれでは、契約当事者同士のやり取りであるため、緊張感に欠けます。
工事による成果物が工事業者の手元にある場合、支払いが完了するまでは引き渡さない、という対応をすることも考えられますが、施主が、引き渡しの前後で態度をガラッと変える、ということから紛争が始まるのが通常であるため、施主が様々な理由をつけて支払わないようになったら、速やかに別の対応を検討する必要があります。
工事代金の未払いの回収の注意点-契約書は必要?-
請負契約がいわゆる口約束で契約書を作成しなかったとしても、契約は有効です。しかし、口約束での契約の場合は、そもそも工事代金がいくらかでもめることがよくあります。契約書を作成していなかった場合は、見積書・請求書など、工事代金について合意があったことを確認できる資料を残しましょう。
また、施主と工事業者が合意した支払期限を過ぎても施主が支払わない場合、
工事代金のほか、延滞利息も一緒に請求できます。延滞利息の利率について合意がない場合、年3パーセントで計算できます(民法第404条2項)。
もっとも、工事代金を回収しないまま放置していると、請求権が消滅します。
請負契約に基づく工事代金債権は、権利を行使することができるときから10年、権利を行使することができることを知ったときから5年で時効により消滅します。通常は、工事代金の支払期限を決めていることから、工事代金債権の消滅時効は支払日の翌日から5年間、と考えてください。よくある誤解で、請求書を送り続けても消滅時効の進行が止まるわけではありませんので、注意してください。
施主が工事業者に工事代金を支払わないこと等が原因で、工事のために雇っている者への賃金支払いが滞った場合、元請業者が「特定建設業者」であれば、立替払いを受けられる場合があります(建設業法第41条2項)。
ここで「特定建設業者」とは、建設業法第15条に適合した建設業者です。
特定建設業者は、直接契約している1次下請業者だけでなく、その者から発注を受けた2次、3次の下請業者も保護する義務があります。このため、自社が2次下請で発注者が1次下請であった場合、元請業者が特定建設業者かどうかを確認してみましょう。
弁護士による建設業の債権回収
既に述べたとおり、支払いを渋る施主との間で直接交渉しても、緊張感に欠ける点があり、回収の時期がどんどん遅くなっていきます。
この点、請負契約のトラブルや債権回収の経験が豊富な弁護士が工事業者の代理人になった場合は、その事案に適した回収方法を提案できます。弁護士が代理人となった場合にとりうる方法は下記のとおりです。
弁護士名義の書面で工事代金を請求する
代理人弁護士名義で工事代金を請求する書面を作成し、内容証明郵便等の
方法でこれを送付します。弁護士は、法的観点から文書を作成し、紛争当事者間でありがちな慣れあいを排した内容の文書を送付します。このため、施主も本気で取り合うという意識になり、結果的に解決に向けた動きが早まります。
弁護士がとりうる法的措置
書面で工事代金を請求しても施主が工事代金を支払わない場合は、次の手段として法的措置に移行します。
ここで、弁護士がとりうる法的措置の概要は下記のとおりです。なお、法的措置については別にコラムを掲載しております。ご参照ください。
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債権回収を弁護士に依頼するメリットとは?手続きの流れについても解説!
支払督促
簡易裁判所の書記官が、債務者に対して支払督促書を送達する手続。
債務者(施主)から異議(督促異議)がでなければ、早くて1か月から2か月程度で強制執行手続を行うことができます。
民事訴訟
簡易裁判所又は地方裁判所に訴訟を提起し、施主に工事代金の支払いを求め
ます。勝訴すれば、未払いの工事代金を強制的に回収することができます。
また、訴訟を提起しても、判決になるまでに和解で解決することもあり得ます。和解のメリットは判決よりも早期に解決し、かつ、支払いを期待できる点です。
強制執行
債務名義(確定判決、仮執行宣言付支払督促、和解調書など)がある場合は、
施主の財産を差し押さえる(強制執行)ことで、強制的に代金を回収することができます。
仮差押
工事代金を請求する民事訴訟を提起してから判決までの間、施主の財産がなくなった場合、裁判に勝ったとしても、回収ができなければ勝った意味がなくなることもあります。係る事態を防止するため、民事訴訟を提起する前に、施主の
財産を仮に差し押えることで財産を確保することも可能です。仮差押えは、施主の財産(不動産、銀行預金、工事代金債権など)に対してすることができます。
勿論、工事業者もインターネット等で調べて、これらの手続をご自身ですることも可能です。ですが、その場合、裁判所とのやり取りをご自身で対応しなければならず、裁判所から求められる対応は法的知識がないと十分に対応できないことがよくあります。債権回収を弁護士に依頼すれば、工事業者に本業以外の負担がかからず、本業に専念することができます。
工事代金の未払いの回収に関するまとめ
工事代金の未払いは、交渉で解決しなければ法的措置へ移行する必要があるので、早い段階から弁護士に相談しておくことが適切です。また、弁護士が代理人になった方が、相手方も態度を明確にせざるを得なくなり、結果として紛争処理が前進します。
リブラ法律事務所では、工事代金の回収のために代理人となることも可能です。お気軽にご相談ください。
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Last Updated on 3月 14, 2024 by kigyo-lybralaw
この記事の執筆者 事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。 |