労災に強い弁護士にトラブル解決を依頼するメリット

労災に強い弁護士にトラブル解決を依頼するメリット

はじめに

 企業側は、従業員に労災が発生した場合、初期段階で専門家に相談して、対応を立案しておくことが適正な解決のための道筋です。

 労災は、民事・刑事両面に発展する可能性があります。

労災について企業側から相談を受けた弁護士が考えること

・労災であることが明らかなときは被災者への補償対応

・労災上乗せ保険や使用者賠償責任保険等に加入している場合は内容を確認して請求

・労災事故に関する事実関係の調査と証拠の確保、記録のサポート

・労働基準監督署長への報告のサポート

・事事件としての捜査が予想される場合の対応

 上記各事項に共通する点は「事実関係の把握と証拠の確保」です。自社の立場を正確に主張するためには不可欠です。

 また、私が企業側からよく聞かれる2つの代表的な質問とその回答は下記のとおりです。

(1)従業員から労災申請への協力を求められたら

 企業の意思はどうあれ、法律上は「手続についての助力」と「必要な証明」に関して協力をする義務があります。

 また、労災か否かを判断するのは労働基準監督署です。このため、企業は、当該事案が労災に該当しないと考えている場合、資料等でその根拠を示していくべきです。この観点から、労災申請の書式欄には「事業主証明」の箇所があるところ、当該部分への記載については、安易に従業員のいうとおりにするのではなく、慎重な対応をするべきです。でなければ、後述するように、従業員が企業に損害賠償請求をしてきた場合、企業が労災であることを認めていた(そのことは企業にとって不利となる)という主張の根拠とされかねません。企業としては、従業員に何をいわれようが、そのような事実があったのか否か、という企業側の認識を記載すべきです。

(2)労災認定されたあとの損害賠償請求への対応について

 従業員が、労働基準監督署から労災認定を受けた場合、企業は、更なる請求をされる可能性があります。というのも、労災給付の対象に、従業員が被った損害の一部(慰謝料や逸失利益)は補償の対象となっていないからです。

 このため、被災者から企業に対し、損害賠償請求がなされます。とりわけ、死亡事案や長期間に亘る入通院を伴う被害が生じた場合にその傾向が顕著です。

 企業と従業員との間で損害賠償請求について意見が折り合わず、訴訟となることも十分考えられます。ただし、企業は、労働基準監督署が当該事案に労災の判断をしたとしても、当該事案は労災ではない旨の主張を訴訟の中ですることが可能です。また、裁判所が当該事案を労災と考えたとしても、従業員が被った損害額を減額する主張をすることも可能です。

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2 具体的な労災事案への対応

(1)うつ病などの精神疾患

 精神疾患の労災とは、業務に起因して精神疾患を発症したと認められる場合です。労災として認定されるためには、下記要件が必要です。

・発症前おおむね6か月以内に業務による強いストレスを受けたこと

・うつ病やストレス反応など労災認定の対象となる精神疾患と診断されたこと

・業務外のストレスや個体側要因により発症したとはいえないこと

 1つ目の要件である「強いストレス」を受けたかどうかは「特別な出来事」または弱・中・強の3段階で評価される「具体的出来事」に分けられて判断されます。内容は以下の通りです。

 <特別な出来事>

心理的負荷が過度のものと極度の長時間労働に分けられます。

心理的負荷が過度なものとは

・生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした

・業務に関連し、他人を死亡させ、又は生死にかかわる重大な怪我を負わせた(故意によるものを除く)

・強姦や本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントを受けた

・その他、上記に準ずる心理的負荷が極度と認められるもの極度の長時間労働とは

・発病直前の1カ月に概ね160時間以上の時間外労働を行った場合

・発病直前の3週間に概ね120時間以上の時間外労働を行った場合

 <具体的出来事>

特別な出来事がない場合は、発症前6か月以内の具体的な出来事を総合的に評価して、強いストレスを受けたかどうかを確認します。

強いストレスを受けたとされる例は下記のとおりです。

・事故や災害の体験

・仕事の失敗、過重な責任の発生

・役割や地位の変化

・パワーハラスメント

・カスタマーハラスメント

・対人関係のトラブル(同僚からのいじめ等)

具体的基準は下記からご確認ください。

心理的負荷による精神障害の認定基準について

2つ目の要件である精神疾患とは、主として下記のとおりです。

・双極性感情障害(躁うつ病)

・うつ病

・躁病

・恐怖症性不安障害

・パニック(恐慌性)障害

・対人恐怖症、社会恐怖症などの個別的恐怖症

・急性ストレス反応

・適応障害

3つ目の要件として、例えば下記のような例の場合は、業務に起因するとは認められないとされています。

・離婚や重い病気、家族の死亡や多額の財産の損失、天災や犯罪被害の

体験等、業務とは無関係のストレスにより、精神疾患を発症したと判断

される場合

・過去に精神疾患で通院歴がある、アルコール依存などの問題がある等、

従業員側の要因によって、精神疾患を発症したと判断される場合

 従業員からうつ病などの精神疾患について労災の主張が出てきたときは、はじめから、企業として正しく対応することが必要です。とりわけ、従業員が述べる精神疾患の原因(パワハラ、長時間労働)の事実が、企業の事実認識と異なっている場合は、労災申請の段階でも、企業側の主張を手続に反映させていく必要があります。特に、従業員から求められる「事業主証明」については従業員の言いなりにはならないこと、事業主の意見申出制度(労災保険法施行規則)を利用して企業側の主張を労働基準監督署による調査に反映させていくことは大事です。これらの活動は、労災認定についての結果が出るまでの早い時期に行わなければ効果が薄いため、できる限り早く、専門家にご相談いただくことが必須です。

(2)身体に外形上の傷害がある労災について

 これらの症状の場合は、精神疾患に比して、企業も労災か否かを判断やすいです。労災となる場合、企業側は、被災者に対して、適切な補償を行っていくこととなります。勿論、従業員が主張することをそのまま聞く必要はなく、例えば、休業の必要性について疑義がある場合は、企業側の見解を労働基準監督署長に適切に伝えることが必要です。

(3)脳梗塞、脳出血の労災について

 このような症状の場合、労働基準監督署は、業務の過重性に着目して労災か否かを認定します。例えば、その従業員の長時間労働の有無や程度、業務によるストレスの程度、勤務の不規則性、出張時の移動に伴う負荷の程度等を調査します。また、企業側が行う過去のストレスチェックで、当該従業員の業務の負荷の程度がどう評価されていたかも重要なポイントです。

 企業側は、当該従業員が自宅で自主的な仕事をしたことや企業の指示によらない自己研鑽的な時間が労働時間と評価されないように、労基署長宛に意見書を提出して主張していくことになります。

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3 まとめー労災事案で初期段階から弁護士が関与すべき理由

 労災トラブルへの対応は、労災の制度に対する理解や、労災認定基準の理解、一般的な病気や怪我についての知識が求められます。どれも専門的な知識と経験が必要です。

 労災を日頃から取り扱っていない弁護士に相談しても、適切な対応を望むことはできません。

 上記2では、いくつかの労災原因について企業側に求められる対応をお伝えしました。ただし、企業側で、日々の業務を遂行しながら上記のような対応をすることは困難、と感じられたのではないでしょうか。

 一口に企業側の弁護士といっても、会社法に詳しい弁護士、M&Aに詳しい弁護士等、企業法務を扱う弁護士なら誰でも労災トラブルに対応できる、というものでもありません。そのため、私は、インターネットを検索し、労災トラブルを取り扱うと明示している弁護士を探して相談することが、適切な弁護士に相談する方法であることをお伝えします。

 リブラ法律事務所では、企業側で、労災トラブル等の労働問題に対応いたします。料金等が気になる場合は、お気軽にご相談ください。

Last Updated on 4月 18, 2024 by kigyo-lybralaw

この記事の執筆者
弁護士法人リブラ総合法律事務所

事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。

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