介護施設でもカスハラが見られます。
様々な施設がこの問題に悩まされています。以下では、法的観点から、カスハラへの対応策を解説します。
介護施設におけるカスハラとは?
介護施設でのカスハラとは、利用者及びその家族が、職員に対して行うハラスメント(過剰な要求や理不尽な要求)をいいます。もはや社会問題化しているといってよいです。
カスハラへの対応を間違えると、職員を精神的に圧迫し、ひいては職場の雰囲気を悪化させるばかりか、ブログやSNSにより施設の悪評として拡散する可能性もあります。
このことは、介護施設でも例外ではありません。
厚生労働省は「職場のパワーハラスメント対策についての有識者検討会報告書」(2018年3月)で、はじめて顧客からのクレームに言及し、「顧客や取引先からの著しい迷惑行為は職場のパワーハラスメントと類似性がある」として「社会全体で機運を醸成していくことが必要」だとの意見も記載されています。
このことは、クレームが社会問題として認識されたといえるでしょう。
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高齢者世代によるクレームも増加
日本では超高齢化社会を迎えたといわれ、一部では「シルバーモンスター」の存在も脅威として捉えられています。
「犯罪白書」(平成29年版)には、2016年の刑法犯検挙者のうち65歳以上の高齢者が、他の年齢層と比較して検挙者が最も多く、全体の20.8パーセントを占めた、とのことです。殊に、暴行で検挙された高齢者が増加しているとのことです。その原因は様々でしょうが、独居や身寄りが周囲にいないことでの疎外感や孤独感からくる怒りもあろうかと存じます。
介護施設では、利用者及び家族等による職員に対するハラスメントが、職員の確保を妨げる要因となっているとの認識から、事業主が雇用管理上の配慮として行うことが望ましい取組みの例として、
①相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
②被害者への配慮のための取組み
③被害防止のための取組み
を規定する等して、介護現場におけるパワーハラスメントを防止することが求められています(介護保険法施行規則第140条の63の6第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準について 等)。実際、「過労死等の労災補償状況・平成30年度(厚生労働省)」によると、精神障害の労災請求件数が1820件あるところ、請求件数のうち、業種別(大分類)のうち一番多いのが「医療・福祉」であり、業種別(中分類)では、大分類である「医療・福祉」のうち「社会保険・社会福祉・介護事業」が一番多いとされています(平成30年度「過労死等の労災補償状況」を公表します)
カスハラが起こる背景
多くの施設は、現在でも、顧客満足を最優先に考えています。ですが、現代社会はインターネットにより容易に大量の情報へのアクセスが可能であることから、同業他社との比較が容易になり、顧客の期待が増して同種のサービスを要求する、あるいは、施設への要求が奏功した事例を見た顧客が更に要求を行う、という状況もあろうかと存じます。
カスハラの具体例
代表的な例は下記のとおりです。
・欠陥があった商品・サービスの代金より高額な賠償を求める。
・サービスの質・量について執拗にクレームをつける。
・施設から精神的苦痛を与えられたとして慰謝料を求める。
・職員の接客や言葉遣いにクレームを述べる
・苦情に対する対応が悪いとして更に苦情を述べる
・自分だけの特別待遇を求め、あるいは気に入らない職員の解雇を求める。
・施設側の些細な落ち度について謝罪文等の書面や土下座を要求する。
勿論、上記の中にも正当なクレームと言える例はあるものの、カスハラと評価できるクレームは、概して、執拗であるとか大声を出す、といった傾向が見られます。まさに「パワーハラスメント」です。介護施設におけるカスハラの例として上記以外に特有なものは「利用者の財産を(施設の職員等が)領得した」「利用者が(施設の職員等から)虐待を受けた」というものです。
しかも、厄介なことに、現代社会ではカスハラの光景を動画で撮影して拡散させることが容易です。このことで、事案をよく知れば施設が悪くないことでも、まるで施設の対応に問題があったかのような印象が流布される可能性もあります。一度流布した印象は容易に払しょくすることができず、この点も、施設の担当者を悩ませることになるのです。
具体的対策―弁護士が早期に関与することの重要性―
カスハラには、個々の職員の努力で対応するのではなく、組織的に対応すべき事象です。また、利用者やその親族からのクレームには傾聴すべきものもあることは上記のとおりです。
このため、組織的な対応の方法ですが、まずは、職員が執るべき対応を統一化することが寛容でしょう。例えば
・謝れば済む問題であれば、謝る。ただし、謝り方として不快感に対して謝る不満に対して謝る手際が不適切であったことに対して謝ることとして、施設の落ち度があったから謝るのではない姿勢を明確にする。
・謝っても収まらない場合は、結論を急がず、相手が何を求めているのかをじっくり把握する。概ね、対応を始めてから30分経過しても収まらない場合は、1人での対応を諦めて複数人で対応をはじめる。
・複数人対応でも埒が明かない(理不尽な要求)と感じたら、代表を出すのではなく、組織外の第三者が対応することを検討する。
といったことです。上記は1例で、その場面に応じて使わない方がよい言葉や
個別の話術にどう対応するか、という細部については、組織内研修で経験をシェアするなり、外部講師による研修をすることで対応できるでしょう。ですが、組織での対応が難しい(施設にはほかにも利用者がいる)と感じたら、必要であれば警察に通報する、あるいは、これから先は弁護士に対応させる、という対応が有効です。というのも、カスハラをなす利用者は、自分が述べていることに根拠がないと感じている場合があり、第三者が介入することを嫌気するからです。また、対応に困った職員が「警察に通報する」「弁護士に対応してもらう」と言える(言ってもよい)、という安心感があれば、心理的に楽になることが期待できるからです。
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介護業におけるカスハラに関するまとめ
施設がカスハラ問題に取り組む際には、弁護士の支援を受けることが有効です。弁護士は以下のような方法で施設を支援します。
法的な助言
対策の策定
法的措置を執る
カスハラ問題に直面した際には、専門的な支援が必要となります。
また、弁護士であれば、問題となった事例を基に、事前のコンサルテーションやトレーニングを行い、カスハラを防止するための策を立てることも可能です。カスハラ問題に取り組むためには、まず弁護士にご相談ください。
Last Updated on 3月 6, 2024 by kigyo-lybralaw
この記事の執筆者 事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。 |