カスハラマニュアル策定のポイントとは?弁護士が解説

カスハラマニュアル策定のポイントとは?弁護士が解説
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1. カスハラ対応マニュアル策定のポイントを弁護士が解説!

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「社員がお客様から怒鳴られて、休職してしまった」「一人の常連客の長時間クレームで現場が疲弊している」「2026年10月からカスハラ対策が義務化されると聞いたが、何から手をつければよいか分からない」——大分や九州で中小企業を経営していてそんな悩みを抱えているなら、この記事はあなたのために書きました。

大分市内や別府、中津、佐伯、日田など地域で事業を営む経営者の方々から、最近リブラ法律事務所にも「カスハラ対応マニュアルを作りたい」というご相談が急増しています。小売、飲食、運送、介護、建設——業種は様々ですが、共通しているのは「東京の大企業向け情報はあふれているが、地元の中小企業が限られた人員と予算でどう準備すればよいか分からない」という切実な声です。

カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」は、もはや一部の業界だけの問題ではありません。厚生労働省「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査」によれば、過去3年間に労働者からカスハラの相談があったと回答した企業は27.9%で、前回調査の19.5%から8.4ポイント増加しています。UAゼンセンが2024年に約3万3,000人を対象に実施した第3回アンケートでは、直近2年以内にカスハラ被害を受けたと回答した人は46.8%——流通・サービス業で働く2人に1人が被害に遭っている計算です。

そして決定的な転換点が2026年10月1日に訪れます。改正労働施策総合推進法が施行され、従業員が1人でもいれば、すべての事業主にカスハラ対策が法的義務となります。努力義務ではありません。違反すれば労働局からの助言・指導・勧告、悪質な場合は企業名公表の対象です。

本記事は、大分・九州で事業を営む中小企業の経営者や総務担当者に向けて、弁護士の視点から**「実際に使えるカスハラ対応マニュアル」を作るための具体的ポイント**をお伝えします。九州の中小企業の現場感覚に即した実務的な内容です。

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2. カスハラ対応マニュアルに掲載すべき内容5選について

「マニュアルを作らなければ」と決意したものの、何を書けばよいのか——ここで多くの経営者が立ち止まります。厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(2022年2月公表)や2026年2月26日に告示された「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)を踏まえ、中小企業が最低限押さえるべき5つの内容を解説します。

2-1. 会社としての基本方針

マニュアルの冒頭には、必ず経営者としての明確な姿勢を記載してください。「当社は、従業員の尊厳を守るため、カスタマーハラスメントには組織として毅然と対応します」——このたった一文があるかないかで、現場の従業員の動き方は180度変わります。

改正法施行に伴う厚労省指針では、この「方針の明確化と周知・啓発」が事業主の雇用管理上の措置義務の第一項目として位置づけられました。方針を明示しない経営者のもとでは、従業員は「社長に叱られるのでは」「お客様を怒らせたら自分の責任にされるのでは」と萎縮してしまい、どんなに立派なマニュアルを用意しても機能しません。

2-2. カスハラの定義と具体例

次に必要なのは、「何がカスハラに該当するのか」を明確にする定義です。厚労省指針では、以下の3要件をすべて満たす言動がカスハラとされています。

  1. 職場において行われる顧客等の言動であること
  2. 労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものであること
  3. 労働者の就業環境が害されること

ただし、定義だけでは現場は動けません。自社の業種で実際に起こりうる具体例を箇条書きで列挙してください。たとえば運送会社なら「配達遅延への大声での叱責」「土下座の強要」、介護施設なら「利用者家族からの暴言」「職員への身体的接触」、飲食店なら「味付けへの過度なクレーム」「SNSでの誹謗中傷の示唆」など、自社の現場で起きそうな場面を具体的に描くことが重要です。

2-3. 対応フローチャート

カスハラが発生したとき、現場の従業員が最初に取るべき行動を、誰が見ても分かる1枚のフローチャートにまとめましょう。牛島総合法律事務所のニューズレターでも触れられている通り、複数人での対応や、一次対応者に代わって現場監督者が対応するといった、就業者の安全に配慮した流れを組み込むことが肝要です。

中小企業向けに、実務で使える基本フローの例を示します。

  • ステップ1:まず謝意を示しつつ、事実関係を冷静にヒアリング
  • ステップ2:「これはカスハラかもしれない」と感じたら、すぐに上司を呼ぶ
  • ステップ3:上司が対応を引き継ぎ、必要に応じて複数人で対応
  • ステップ4:録音・録画・メモで記録を残す
  • ステップ5:暴力・脅迫・長時間拘束など悪質な場合は即座に警察へ通報
  • ステップ6:対応終了後、記録を整理し本部または顧問弁護士に報告

2-4. 相談窓口と報告ルート

社内に相談窓口を設置し、全従業員に周知することも不可欠です。厚労省指針では相談窓口の整備が義務化されており、従業員数が少ない企業であっても、担当者を明示的に決める必要があります。

九州の中小企業の場合、総務部門がない会社も珍しくありません。その場合は社長自身が相談窓口を兼ねる、あるいは外部の顧問弁護士や社会保険労務士を窓口として周知するという方法もあります。重要なのは「誰に相談すればよいか、全員が知っている」状態をつくることです。

2-5. 過去事例と悪質ケースへの対応基準

最後に、実際に自社または同業他社で起きた事例と、その対応記録を蓄積・掲載していくことが、マニュアルを「生きた教科書」にします。特に、警察通報や弁護士相談に踏み切るべき「悪質ケース」の判断基準——暴力行為、脅迫、1時間を超える長時間拘束、SNSでの誹謗中傷、土下座要求など——は、具体的な線引きを示しておくと現場が判断に迷いません。

UAゼンセンの調査では、カスハラ行為のうち「暴言」が39.8%、「威嚇・脅迫」が14.7%、「長時間の拘束」が11.1%を占めています(出典:UAゼンセン第3回アンケート調査)。自社の業種ではどのパターンが多いかを把握し、マニュアルに反映させることが実効性を高めます。

3. 使いやすいカスハラ対応マニュアルを作成する3つのコツとは

どれほど内容が充実していても、現場で使われなければマニュアルは紙くずです。九州の中小企業の現場を数多く見てきた弁護士の視点から、「本当に使われるマニュアル」をつくる3つのコツをお伝えします。

3-1. A4で10ページ以内、イラスト・フローチャート中心

東京の大手法律事務所が公開している大企業向けマニュアル雛形は、往々にして100ページを超えます。しかし、従業員10名の運送会社や20名の介護施設でそれを読み込む時間はありません。A4で10ページ以内、できれば7ページ前後にまとめることを強くおすすめします。

文章は最小限にし、フローチャート、イラスト、実例の写真やスクリーンショットを多用してください。パート・アルバイトを含む全従業員が、休憩時間の5分で目を通せる分量——これが実務の鉄則です。

3-2. 「NGワード集」「OKフレーズ集」を併記する

現場で最も困るのは、「お客様にどう言い返せばよいか分からない」という瞬間です。そこで、使ってはいけないNGワードと、代わりに使うべきOKフレーズを対比形式で掲載すると、即戦力になります。

たとえば以下のような形式です。

NG:「それはうちでは対応できません」 OK:「恐れ入りますが、そのご要望はお受けできかねます。代わりに〇〇のご提案は可能ですが、いかがでしょうか」

NG:「何度も同じことを言わないでください」 OK:「恐れ入りますが、先ほどお伝えした通り、当社としては〇〇とさせていただいております」

こうした具体フレーズを業種別・場面別に並べておくと、新人でもすぐに使えます。

3-3. 現場の声を反映する「改訂サイクル」を組み込む

マニュアルは「作って終わり」ではありません。半年に1回、現場から集めた事例をもとに改訂するサイクルをあらかじめ組み込んでください。これは厚労省指針でも「実際の事例を活用してマニュアルの改善に役立てること」として推奨されている取り組みです。

労務問題/契約書/クレーム対応/債権回収/不動産トラブル/広告表示/運送業・建設業・製造業・不動産業・飲食業・医療業・士業の業種別トラブル等の企業の法務トラブルは使用者側に特化した大分の弁護士にご相談ください

大分市内のある小売店では、毎月の朝礼で「今月ヒヤッとしたお客様対応」を共有する時間を5分だけ設け、その記録を半年ごとにマニュアルに追記する運用を続けています。結果、2年間で従業員の離職率が大きく下がったとのことです。現場の声を吸い上げる仕組みこそ、マニュアルを生かす最大のコツです。

4. カスハラ対応マニュアルを活用する6つのポイント

マニュアルを作成したら、次は運用フェーズです。ここで失敗すると、せっかくの労力が水の泡になります。実際に九州の中小企業で運用がうまくいっている現場に共通する、6つのポイントをご紹介します。

4-1. 全従業員への配布と年1回の読み合わせ

マニュアルは全従業員に配布するだけでなく、年に1回は全員で読み合わせる機会を設けてください。特に中小企業では、パート・アルバイト・外国人労働者など多様な雇用形態の方が現場にいます。入社タイミングもバラバラなため、年次の読み合わせがないと周知が形骸化します。

4-2. ロールプレイング研修の実施

座学だけでは、実際のカスハラ場面で体が動きません。年2回程度、ロールプレイング形式の研修を実施することを強くおすすめします。「お客様役」と「従業員役」に分かれて実演し、フィードバックを与え合う——この地道な訓練が、いざというときの従業員の守りになります。

厚労省の業種別マニュアル(スーパーマーケット業編、介護業編など)にも、具体的なロールプレイ事例が掲載されています。自社業種のマニュアルをダウンロードして研修素材に活用できます。

4-3. 録音・録画体制の整備

対応の記録を残すことは、後の紛争で決定的な証拠になります。店舗・事業所の入口や応接室に「カスタマーハラスメント対策のため、店内の音声を録音することがあります」との掲示を出し、録音機器を備え付けることは、抑止効果としても有効です。

4-4. 警察・弁護士への連絡基準を明文化

「いつ警察を呼ぶか」「いつ弁護士に相談するか」——この判断基準をマニュアルに明記し、現場の従業員が迷わず動けるようにしておきましょう。目安として、暴力行為・脅迫発言・1時間を超える長時間拘束・物損・SNSでの個人名入り誹謗中傷などが発生した場合は、即座に外部機関と連携すべきタイミングです。

4-5. 被害従業員へのケア体制

カスハラ被害は従業員の心身に深刻なダメージを与えます。UAゼンセンの調査では、被害者のうち「寝不足が続いた」「心療内科に行った」と回答した方も相当数にのぼっています。被害を受けた従業員に対して、対応担当を変更する、ストレスチェックを実施する、必要に応じて産業医や心療内科を紹介する——こうしたアフターケアをマニュアルに組み込んでください。

4-6. 経営層の関与とメッセージ発信

最後に、最も重要なポイント——経営者自身が「従業員を守る」というメッセージを、繰り返し発信し続けることです。マニュアルの運用を総務任せ・現場任せにするのではなく、社長自らが朝礼やミーティングで「当社はカスハラから従業員を守る」と明言し続けることで、組織全体に文化として根付きます。これが、大企業にはない中小企業の最大の強みです。

5. カスハラ対応で弁護士を利用するメリットとは

「マニュアル作成くらい、インターネットの雛形をダウンロードして自社で作れるのでは?」——そう思われるかもしれません。確かに雛形はあふれています。しかし、弁護士と一緒に作るマニュアルと、雛形をコピーしただけのマニュアルでは、実務での使い勝手が全く違います。大分・九州で顧問先のカスハラ対応を多く手がけてきた立場から、弁護士活用のメリットを3点お伝えします。

5-1. 自社業種・地域に即したカスタマイズ

東京の法律事務所が公開する雛形は、大企業や首都圏の事業環境を前提にしています。しかし、大分の運送会社と、東京のコールセンターとでは、発生するカスハラの質も対応の現実性もまったく異なります。地域の産業構造、取引慣行、労働市場を理解した地元の弁護士が関与することで、「自社で本当に使える」マニュアルに仕上がります。

5-2. 法的紛争に発展した際のシームレスな連携

マニュアルを作成した弁護士が、そのまま顧問弁護士として継続的に関与している場合、実際にカスハラから法的紛争に発展した際の初動が圧倒的に速くなります。内容証明の発送、警察への同行、損害賠償請求、さらには悪質なカスハラ客への民事・刑事両面からの対応——すべてが一貫したストーリーで進められます。リブラ法律事務所では、原則として同日または翌日の相談対応を基本としており、九州圏内のクライアントからの緊急相談にも迅速に対応しています。

5-3. 安全配慮義務違反リスクの回避

カスハラから従業員を守る体制を整えていなかった企業は、従業員から安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求訴訟を提起されるリスクを負います。実際、長崎地判令和3年1月19日、甲府地判平成30年11月13日など、企業側の対策不十分を理由に責任を肯定した裁判例が蓄積しています。弁護士が関与してマニュアルを整備し、運用記録を残していれば、万一の訴訟でも「法令とガイドラインに沿った誠実な取り組みをしていた」と主張できます。これは経営リスクマネジメントとして極めて重要な投資です。

6. カスハラでお悩みの方はリブラ法律事務所まで

ここまでお読みいただいた経営者の方は、こう感じているはずです——「やるべきことは分かった。でも、うちのような小さな会社でも、本当にここまでできるだろうか?」

大丈夫です。完璧なマニュアルを一度に作る必要はありません。まずは「基本方針1枚」「連絡体制1枚」「対応フローチャート1枚」——この3枚から始めてください。それだけで従業員の安心感は劇的に変わります。半年、1年かけて現場の事例を積み上げながら育てていけばよいのです。

2026年10月1日の改正労働施策総合推進法施行まで、残された時間は限られています。しかし、今日この記事を読み終えたあなたには、もう迷う必要はありません。次の一歩を踏み出すだけです。

リブラ法律事務所は、大分市中島中央に拠点を置き、九州全域の中小企業のカスハラ対策・労務問題に取り組んできました。大分、別府、中津、佐伯、日田、福岡、熊本、宮崎、鹿児島、長崎、佐賀——九州各地の経営者の皆様から、「東京の大手事務所では相談しづらい、うちのような規模の悩みを理解してくれる地元の弁護士が欲しい」というお声を数多くいただいています。

初回相談では、貴社の業種・規模・現在の対応体制をお伺いしたうえで、「まず何から着手すべきか」の優先順位を一緒に整理します。マニュアル雛形の提供、作成支援、従業員研修、悪質クレーマーへの通知書作成、訴訟対応——段階に応じてフルサポートいたします。

「こんなことで相談してよいのか」という些細なご質問でも構いません。従業員の尊厳を守り、経営の基盤を固めるために、私たちがお力になります。

ご相談はお電話(097-538-7720)、メール(lybra@triton.ocn.ne.jp)、からお気軽にどうぞ。 2026年の義務化に向けた対策は、早く始めるほど選択肢が広がります。今日が、その第一歩です。

7.【巻末】カスハラ対応マニュアル策定チェックリスト

カスハラ対応マニュアルを策定・運用する際に押さえるべきチェックリストはこちらです。各項目にチェックを入れながら、自社の準備状況を確認してください。

Last Updated on 5月 22, 2026 by kigyo-lybralaw

この記事の執筆者
弁護士法人リブラ総合法律事務所

事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。

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