1 介護業における労務問題の現状
介護業務は、少子高齢化の進行と共に、その重要性が益々高まっています。その反面、労務管理に関しては深刻な課題を抱えています。例えば、人手不足による過重労働や夜勤の増加、長時間労働が一般化している点です。このような状況では、職員の心身に大きな負担がかかり、労働環境の悪化は、事業者にとって大きな懸念事項です。労働環境の悪化は、離職率の上昇やサービスの質の低下に直結し、事業運営全体に悪影響を及ぼすため、介護事業者として具体的な対策をうつ必要があります。
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人手不足の深刻さ
特に深刻なのが人手不足です。介護職員が不足しているため、残っている職員に過度な負担がかかりがちです。例えば、一つの施設で夜勤を複数回担当するケースが増えた結果「夜勤が週に4回以上連続する」「休暇が取得できない」として、スタッフの疲弊を招いています。この問題を放置すると、さらに職員が辞める悪循環に陥りかねません。このため、介護事業主は、労働基準法や業界ガイドラインに従った労働時間管理を徹底する必要があります。
労働時間の増加(「人手不足による夜勤など」)
人手不足は、介護業界において過度な労働時間を強いる要因の一つとなっています。例えば、夜勤が増えることや、シフト制による不規則な労働時間が長期化すると、職員の疲労度が増し、疲労が蓄積した職員が業務上のミスをしてしまう、という介護の質にも影響が出る可能性があります。これは、職員が過労死の危険にさらされるだけでなく、業務効率の低下や事故のリスクも高めるため、特に注意が必要です。
2 労務管理方法
では、労務管理は何を、どのように行えばよいでしょうか。介護業界では、適切な労務管理が企業存続の鍵を握ります。特に、労働基準法に基づいた時間管理や休暇の付与、そして就業規則の整備が重要です。
労働時間管理
まずは、職員の労働時間の管理です。労働時間の管理は、基本的に、介護事業者側が行うべきとされています。相当な数の介護事業者が、労働時間を管理するためにタイムカードやシフト管理システムを導入しているものと思われます。出退勤時間が機械的に記録されますので、ある程度は職員の労働時間を正確に把握することができます。しかし、それだけでは不十分です。実際には、タイムカードを押していても特定の時間に労働していない(喫煙等の休憩を頻繁にとる)、あるいは、終業時間を打刻してからまた仕事に着手するといった、印字された時間との齟齬が生じることがあり、後に時間外労働があったとして残業代請求がなされることもあります。また、シフト間の休息時間が十分でなく、連続した労働時間と見られることもあります。このような問題を防ぐためには、シフト管理を見直して夜勤や長時間シフトのバランスを取る、また、シフト表の作成時には、職員の負担が過度に偏らないよう配慮し、定期的なフィードバックを通じて実際の労働状況を改善していく必要があります。タイムカードの打刻時間と実際の労働時間が一致するような労務管理を行う(始業・終業時間を厳格に管理する)ことが不可欠です。
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就業規則
次に、就業規則の見直しも労務管理の重要なステップとなります。例えば、労働基準法が定める基準に従い、夜勤や残業に関するルールを明確に記載する必要があります。さらに、適正な休暇取得の仕組みを就業規則に反映させることで、職員が安心して働ける環境を整えることができます。また、近時、労働法制は頻繁に改正がなされています。このため、就業規則が職場にあるだけでは十分といえず、内容をアップデートし続ける必要があります。
3 弁護士に依頼するメリット
労務管理において弁護士を依頼する最大のメリットは、法的トラブルを未然に防ぐための予防策を講じられることです。例えば、適正な就業規則の整備や労働契約書の見直し、問題が発生する前にアドバイスを得ることで、将来的なリスクを軽減できます。また、万が一労働問題が発生した際には、迅速な対応が可能です。特に、職場におけるトラブルの予防策を弁護士と一緒に立案していくことは重要で、日常業務に予防策を組み込む、労働法制の改正に応じた就業規則や雇用契約書の記載を修正する、といった細やかな支援をなすことで、職員とのトラブルをより減少させることが可能です。弁護士に相談する際は、まず現状の問題を具体的に整理することが重要です。その後、弁護士と面談を行い、具体的な問題解決の提案を受ける流れとなります。特に労働時間管理や就業規則の整備は、弁護士のアドバイスを受けて効果的に進めることができます。弁護士と顧問契約を結ぶことで、日常的な相談やトラブル対応がスムーズになり、迅速な対応が可能となります。勿論、職員との間で具体的なトラブルが生じてから弁護士に相談することも可能です。ですが、その場合、その介護事業所のことをあまり知らない弁護士に一から説明を行うことの煩雑さ、事件単位で関わるためにその職場に潜む改善点を意識することなく業務が終了してしまうこと、自社が法律に則った事業ができているのかを継続的に確認することができない、といったことから、顧問弁護士がいた方が、日常的に問題点を確認することができ、事業所としての安心感が増します。その結果、職員の定着率もよくなり、顧客も安心してサービスを受けることも可能となります。
4 まとめ
介護事業者にとって、労務管理は事業の安定と職員の健康を守る上で不可欠です。適切な管理を行うためには、弁護士の法的なサポートが大いに役立ちます。特に、労働問題が発生する前に予防的な対策を講じることで、安心して事業を運営する基盤を築くことができます。顧問弁護士を有効に活用し、安定した運営を目指しましょう。お気軽にご相談ください。
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Last Updated on 10月 2, 2024 by kigyo-lybralaw
この記事の執筆者 事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。 |