企業が労働基準法に違反する行為(残業代未払い、長時間労働等)をすると、行政処分や刑罰の対象となり、イメージダウンは不可避です。大分県の取締り状況を見て、対策を考えましょう。
1.令和4年度から2年度までの監督指導状況
大分労働局は、毎年度、長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した監督指導の結果を公表しています。
令和4年度監督指導実施状況
354事業場に対し監督指導を実施
320事業場(90.4%)で労働基準関係法令違反が認められた。
主な法違反
違法な時間外労働があったものが184事業場
賃金不払残業があったものが45事業場
過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが151事業場
令和3年度監督指導実施状況
457事業場に対し監督指導を実施
365事業場(79.9%)で労働基準関係法令違反が認められた。
主な法違反
違法な時間外労働があったものが170事業場
賃金不払残業があったものが43事業場
過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが87事業場
令和2年度監督指導実施状況
299事業場に対し監督指導を実施
235事業場(78.6%)で労働基準関係法令違反が認められた。
主な法違反
違法な時間外労働があったものが137事業場
賃金不払残業があったものが23事業場
過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが56事業場
ここで、違法な時間外労働の内容を確認してみます。
違法な時間外労働の内容について
令和4年度
違法な時間外労働があった184事業場のうち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:41事業場
月100時間を超えるもの:28事業場
月150時間を超えるもの:9事業場
月200時間を超えるもの:3事業場
令和3年度
違法な時間外労働があった170事業場のうち、時間外・休日労働の実績が最も
長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:40事業場
月100時間を超えるもの:25事業場
月150時間を超えるもの:2事業場
月200時間を超えるもの:2事業場
令和2年度
違法な時間外労働があった137事業場のうち、時間外・休日労働の実績が最も
長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:28事業場
月100時間を超えるもの:18事業場
月150時間を超えるもの:2事業場
月200時間を超えるもの:0事業場
ご承知のとおり、働き方改革として改正された労働基準法で、時間外労働の上限は、原則として月45時間、年360時間とされ、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)とされています。2024年4月1日からは全業種に
上記規制の効力が及び、今後、ますます時間外労働については労働基準監督署から厳しい目が向けられることは間違いありません。また、時間外労働が長時間に及ぶ企業には、インターネットでブラックな企業だとの噂が立ちやすく、悪い噂は瞬時に拡散されます。ひとたび悪いうわさがたつとこれを払しょくすることは容易ではありません。
また、大分の労働基準監督署は、労働時間の把握についても企業を指導監督しています。労働時間の管理方法については、別の記事でも書きましたので参考にしてください。
▼関連記事はこちらから▼
労働時間の管理の適切な方法とは?弁護士が解説!-違法にならないために-
2.労働基準監督署の指導の狙い
大分県下の企業の皆様は、監督指導を実施した事業場数に対する労働基準関係法令違反割合の高さに驚かれたのではないでしょうか。それもそのはず、この監督指導は、労働基準監督署に寄せられた各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象にしているからです。
ここで「労働基準監督署に寄せられた情報」には、その事業場で就業している従業員からの情報、あるいは、過去の違反歴に係る情報が含まれています。
ここからわかることは、労働基準監督署が、事業者が意識しないうちに自社の労働状況を把握し、雑駁な言い方をすれば「法令遵守が十分ではない企業に目をつけている」ことです。
また、令和4年度から2年度までで労働基準監督署の指導監督を受けた事業場の人数を見ると、いずれの年度も、人数が1人から29人までの事業場が70パーセントから80パーセントを占めることが分かっています。
大分の労働基準監督署は、令和5年度以降も、引き続き「時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場」を対象とした指導監督を継続するものと考えられます。
3.大分の労働環境に関するまとめ
以上、大分県の労働基準監督署が、年間どのくらいの企業に指導監督しているのか、労働基準法令違反の内容は、時間外労働や労働時間の把握に関することが多いのか、についてお伝えしました。
大分県下の企業の皆様、とりわけ、従業員が1名から29名までの企業を運営されている経営者にとっては、自社の体制が労働基準法規に照らして万全ではないことが分かっていても、人数が少ないと、日々の業務に追われて組織体制の維持管理を担う人材を確保することが難しいことから、経営者の自助努力のみでは組織体制を改善することは難しいといえます。
私は、これまで、下記コラムで、企業の皆様が顧問弁護士をつけることのメリットについてお話をしてきました。
▼顧問弁護士に関する記事はこちらから▼
この機会に、是非、顧問サービスの導入をご検討ください。
Last Updated on 3月 6, 2024 by kigyo-lybralaw
この記事の執筆者 事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。 |