はじめに
私は、経営者の皆様から、最近、従業員に注意指導しづらい、と言われます。
指導したときに「パワハラ」と言われるのが嫌なようです。
でも、目に余る従業員には指導をしなければ・・・、
そのとおりです。よいやり方があります。
弁護士への相談について
従業員への指導は「書面」で メリットと理由、1回目の注意指導から書面でするように、とまではいいません。人間関係がギスギスするかもしれませんので。
しかし、従業員が同じミスを何度も繰り返すのであれば、注意指導を書面でなすべきです。
その理由は
・従業員の自覚を促す効果がある
・注意指導する側も、従業員に明確に伝わるような表現をするようになる。
結果、コミュニケーションが円滑になる。
・その従業員を、後刻、処分する場合の証拠となる。
・上司が冷静に指導しやすくなる。
というものです。
まず、従業員の自覚を促す、という点について、従業員は、上司から言葉で業務のあり方を伝えられても、その言葉を「注意指導」と受け止めないことがある、ということは意識した方がよいでしょう。これが「書面で注意・指導」を受けたとなると、視覚・触覚に残りますし、非日常的なコミュニケーションであるために記憶に残りやすい(他の従業員にとっても)のです。このことは、当該従業員の「自分は他の従業員と違う扱いをされた」という自覚を促し、上司が自分に業務上の何を求めているのかを理解する機会となります。
次に、書面で注意指導する側も、口語とは違い、より明確に注意指示事項を伝えるために表現を工夫することになります。裁判では、懲戒処分された側が「上司から注意指導を受けたが、意味が明確ではなかった」として、注意指導の内容が適切だったかが論点となることがあります。この場合、裁判所が「上司の当該注意指導は伝わりづらく(適切ではなかった)」と判断すれば、従業員に是正の機会が十分与えられなかったとして懲戒処分が無効となることがあるのです。
また、その従業員の業務態度がいつまでも改まらない場合は懲戒処分(あるいは解雇)を検討することとなるところ、裁判では「そんな注意指導を受けたことはない」と反論されることがよくあります。その場合、注意指導をしたという証拠を示せなければ「注意指導をしたとは認められない」と判断されるのです。
このことは、処分を無効と判断する方向に働きます。従業員の処分が問題となる場合、その従業員に注意指導し続けたという証拠をきちんと提出できれば「ここまで注意指導されたのに聞かない従業員は処分されても仕方がない」という判断に傾きやすくなります。
最後の点ですが、複数の裁判例で、上司が部下を言葉で指導する際、部下の態度に感情的に反応してしまったために、その状態では指導をしたといえない(からその指導を聞かなかったことを理由とした処分は無効)とされてしまう例を見ます。これでは、せっかくの注意指導も台無しです。書面であれば、部下の態度はどうあれ、上司として指導したいことはこれ、という対応をすることで冷静に対処することが可能となります。
注意指導の書面に何を書くべきか
・従業員の具体的な行為(いわゆる5W1Hに気を付けて)が、会社のルール(就業規則)中、どこに違反しているのかを示すこと
・従業員の仕事の進め方に問題がある場合は、従業員がした仕事は○○、会社が求める仕事は△△、何故、○○というやり方が会社のやり方にそぐわないのかを明記し、従業員がどうすべきだったのかを示す
・従業員が注意指導の書面を受け取ったことを証拠化する(受領欄を設けて従業員に署名してもらう等)
です。従業員の中には、2つめについて「自分のやり方の方がよい」と主張する可能性もあるところ、会社における業務の在り方を決めるのは上司、というラインを崩すのはよくありません(上司の指示に逆らってもよい、という考えを正当化させかねません)。よりよい業務を追及するのは別の機会に考えればよいとして、自信をもって注意指導してください。
弁護士への相談について
事業主が従業員の労務を管理するのは、事業を継続するうえで永遠について回ることです。労務管理の一環として、部下への注意指導をなすのは当然のことであり、躊躇すべきではありません。
しかし、冒頭で述べた通り、事業主は、昨今のネット社会の中で、従業員をどう指導してよいのか迷っています。また、実際に注意指導をしたところで、書面によるといってもどういう書式がよいか、実際に書面で注意指導をしてみたが書いた内容はこれでよかったのか、という点に悩むことも考えられます。
これでは、事業主も業務に邁進することができません。本業に集中できない事態は一刻も早く避けるべきでしょう。そこで、部下である従業員に対し、書面による適切な注意指導をどうするかについて、弁護士と相談しながら進めていくことをお薦めします。
弁護士は、上司の伝えたいことが明確に伝わっているか、従業員が注意指導を受け止める内容になっているかを、書面を見ながら指導することができます。
このような業務を繰り返すことで、上司と部下が業務について円滑なコミュニケーションをとることが可能となります。お気軽にご相談ください。
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Last Updated on 4月 8, 2024 by kigyo-lybralaw
この記事の執筆者 事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。 |