介護施設での理不尽なクレームとは?モンスタークレーマーに対する対応策

クレーム

介護事業の遂行にあたり、利用者やご家族からのご意見は大事です。

ですが、中には度を越したご意見(クレーム)もあります。このようなクレームへの対処法をお持ちですか。以下で、法的観点から対処法をお伝えします。

理不尽なクレームは一種の社会現象

介護施設での理不尽なクレームとは、利用者及びその家族が、職員に対して行うハラスメント(過剰な要求や理不尽な要求)行動を指します。

カスハラとも表現できますが、もはや社会現象です。

厚生労働省は「職場のパワーハラスメント対策についての有識者検討会報告書」(2018年3月)で、初めて顧客からのクレームに言及し、「顧客や取引先からの著しい迷惑行為は職場のパワーハラスメントと類似性がある」として

「社会全体で機運を醸成していくことが必要」との意見を記載しています。

このような状況は、介護施設でも存在します。

厚生労働省は、利用者及び家族等による職員に対するハラスメントが、職員の確保を妨げる要因となっているとの認識から、介護施設の運営者が雇用管理上の配慮として行うことが望ましい取組例として

・相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

・被害者への配慮のための取組み

・被害防止のための取組み

を挙げ、介護施設でパワーハラスメントを防止することが求められています(介護保険法施行規則第140条の63の6第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準について 等)。実際、「過労死等の労災補償状況・平成30年度(厚生労働省)」によると、精神障害の労災請求件数が1820件あるところ、請求件数のうち、業種別(大分類)のうち一番多いのが「医療・福祉」であり、業種別(中分類)では、大分類である「医療・福祉」のうち社会保険・社会福祉・介護事業」が一番多いとされています

介護施設での理不尽なクレームは座視できないところまで来ています。

介護現場で起こる理不尽なクレームの実態

代表的な例は下記のとおりです。

・職員の接客や言葉遣いにクレームを述べる。

・サービスの質・量について執拗にクレームを述べる。

・苦情に対する対応が悪いとして更に苦情を述べる。

・施設側の些細な落ち度について謝罪文等の書面や土下座を要求する。

・自分だけの特別待遇を求め、あるいは気に入らない職員の解雇を求める。

・施設から精神的苦痛を与えられたとして慰謝料を求める。

どれも、介護施設に対する建設的な意見ではありませんね。

また、介護施設では、利用者又はその親族が、実際にはそのような事実がないにもかかわらず、「(施設の職員が)利用者の財産を盗った」「利用者が(施設の職員等から)虐待を受けた」という申告もよくあります。利用者側からの理不尽なクレームといえます。

モンスタークレーマー問題の背景

介護施設が多くなったことと情報発信への垣根が極端に下がったことが挙げられます。利用者は、個々の運営者の個性が分からず、インターネットを通じて大分県・大分市内に多数ある介護施設の情報にアクセスをします。

この結果、同業他社との比較が極めて容易であることから、同種事業者であればこのくらいのサービスはできる、という利用者側の思い込みからクレームをつけたところ、介護施設への要求が上手くいった事例(大抵は無償のサービス提供)を目の当たりにし、介護施設への要求水準がどんどん高まることが理不尽なクレームの背景にあるでしょう。

また、介護施設の職員も、利用者の満足度を重要視するために、一見理不尽といえるクレームにも応じてしまうことがあるのです。この点も、介護施設で理不尽なクレームがなされる背景にあります。

モンスタークレーマーへの5つの効果的対応

介護施設におけるモンスタークレーマーへの対応は、施設の運営や職員の士気、さらには利用者の満足度に大きな影響を与える重要な課題です。ここでは、モンスタークレーマーへの効果的な対応方法として、体制の構築、職員教育の徹底、記録重視、専門家の活用、予防的アプローチの5つの項目を中心に考察します。

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1. 体制の構築

モンスタークレーマーに対処するためには、まず明確な対応体制を構築することが不可欠です。具体的には、クレーム対応専任のチームを設置し、各職員がどのように対応すべきかを明確にするマニュアルを作成します。このマニュアルには、クレームの種類や対応フロー、エスカレーションの手順を詳細に記載し、職員が迅速かつ適切に対応できるようにします。また、定期的に体制の見直しを行い、実際のクレーム事例を基に改善を図ることも重要です。

2. 職員教育の徹底

職員教育は、モンスタークレーマーへの対応力を高めるための鍵です。定期的な研修を実施し、クレーム対応のスキルやコミュニケーション技術を向上させることが求められます。特に、感情的なクレームに対して冷静に対応するためのロールプレイやシミュレーションを取り入れることで、実践的なスキルを身につけることができます。また、職員同士での情報共有やフィードバックの場を設けることで、学び合いの文化を醸成し、全体の対応力を底上げすることができます。

3. 記録重視

クレーム対応においては、記録が非常に重要です。すべてのクレーム内容や対応結果を詳細に記録することで、後の分析や改善に役立てることができます。記録には、クレームの発生日時、内容、対応者、対応結果、利用者の反応などを含めるべきです。これにより、同様のクレームが再発した際に迅速に対応できるだけでなく、クレームの傾向を把握し、予防策を講じるためのデータとしても活用できます。

4. 専門家の活用

モンスタークレーマーへの対応には、外部の専門家の知見を活用することも有効です。心理学者やカウンセラーなどの専門家を招き、職員に対するメンタルヘルスのサポートやクレーム対応のアドバイスを受けることで、より効果的な対応が可能になります。また、専門家による定期的な講演やワークショップを通じて、職員の理解を深め、ストレス管理やコミュニケーションスキルの向上を図ることができます。

5. 予防的アプローチ

最後に、予防的アプローチが重要です。クレームが発生する前に、利用者やその家族とのコミュニケーションを密にし、ニーズや不安を把握することが求められます。定期的なアンケートや面談を通じて、利用者の声を聞き、サービスの改善に活かすことで、クレームの発生を未然に防ぐことができます。また、施設内での情報共有を促進し、職員全員が利用者の状況を把握できるようにすることで、より良いサービス提供が可能になります。

モンスタークレーマーへの対応は、単なる問題解決ではなく、施設全体の運営や職員の働き方に深く関わる重要なテーマです。体制の構築、職員教育の徹底、記録重視、専門家の活用、予防的アプローチの5つの要素を組み合わせることで、より効果的な対応が可能となります。これにより、利用者の満足度を向上させ、職員のストレスを軽減し、施設全体の信頼性を高めることができるでしょう。

弁護士に早期に相談することのメリット

介護施設には、一応、理不尽なクレームに対する対処法が存在するものと思慮します。

ですが、対処法があっても、現実に理不尽なクレームに遭遇した場合、事前に十分な練習をしておかないと上手に対処することが困難です。しかも、クレームのつけ方には様々なバリエーションがあり、介護職員が、つい感情的になってしまう可能性が否定できません。

また、厄介なことに、現代社会では介護職員の対応を動画で撮影し、あるいは音声を録音してインターネット上で拡散させることが容易です(編集したうえで)。このため、事案をよく知れば施設が悪くないことでも、まるで施設の対応に問題があったかのような印象が流布します。一度流布した印象は容易に払しょくできずに更に悪評が拡がる・・・、介護施設の運営者にとっては悪夢のようなことです。

このような場合、弁護士に相談できれば、介護事業者にとっての悪循環を

未然に断ち切ることができます。

リブラ法律事務所ができること

上記の通り、弁護士は、介護施設で具体的なトラブルが生じてから対応することも可能です。ですが、理不尽なクレーム対応に詳しい弁護士と顧問契約を締結し、継続的な関係を築くことはさらに有益で、お薦めです。顧問契約を

締結するメリットは下記のとおりです。

まず、対応に困った職員が「警察に通報する」「弁護士に対応してもらう」と言える(言ってもよい)、という安心感があれば、心理的に楽になることが期待できます。勿論、スポットで相談する弁護士が窓口対応することも可能ですが、一旦はその弁護士と相談をしなければなりません。顧問対応の場合は、

電話やメールで相談がすぐに可能です。

次に、顧問となった弁護士は以下のような方法で施設を支援します。

法的な助言:クレームにこれ以上とりあうべきかどうかの判断をなすことができます。

対策の策定:過去の裁判例に照らして、適切・不適切な言動や対処法をお伝えすることができます。施設内にマニュアル等があれば、その内容をチェックし、よりよいものに変えることが可能です。

法的措置を執る:弁護士が直接クレームをつけた人物に対処することで職員が本来の職務に専念できます。

また「モンスタークレーマーへの5つの効果的対応」で施設における効果的な対処法をお伝えしましたが、職員が対処法を策定する際に、顧問である弁護士が助言をすることで、良い対処法を考えることが可能となります。同じ専門家であっても、スポットで相談する弁護士と日頃から関係を築いている弁護士

では、職員の皆様にとっても話し易いですよね。

リブラ法律事務所では、事案ごとのカスハラ問題対応をすることも可能ですし、介護事業所の顧問弁護士として継続的に活動することも可能です。

カスハラ問題に取り組むためには、まずリブラ法律事務所にご相談ください。

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Last Updated on 11月 11, 2024 by kigyo-lybralaw

この記事の執筆者
弁護士法人リブラ総合法律事務所

事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。

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