はじめに
既に報道されたとおり、スシローが労働基準監督署から是正勧告を受けました。
<ここから引用>
回転ずしチェーン大手「スシロー」の都内の店舗が、男性アルバイト店員の賃金支払いの計算で5分未満の労働時間を切り捨てていたとして、中央労働基準監督署から是正勧告を受けた。昨年12月25日付。アルバイトが加入する労働組合「首都圏青年ユニオン」などが明らかにした。
(2024年1月11日 朝日新聞:https://www.asahi.com/articles/ASS1C54WBS1CULFA01V.html)
<ここまで引用>
事業者は、従業員の労働時間をどう管理すべきだったのでしょうか。
適正な労働時間の管理について
労働時間の管理は事業者がなすべき立場にあります。
しかも、事業者は、労働基準法が改正されたことで、従業員の労働時間を把握していない場合は法令違反として行政庁から是正勧告の対象になりました。
※参考:https://jsite.mhlw.go.jp/shimane-roudoukyoku/content/contents/001303412.pdf
厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」を公表し、使用者が具体的にどのような方法で労働時間を管理すべきかを示しています。
※参考:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/070614-2.pdf
行政庁の是正勧告は、場合によっては企業名が公表されることもあり、罰則はないというものの、これまで以上に適正な労働時間管理を求められることとなりました。
論理的には「1分残業」もありえます。労働時間に関する通達についてもっとも、事業者は「1分でも残業」という論理を受け容れ難い場合があるでしょう。具体的には、きちんと仕事をしていない従業員程残業時間が長いのに、というよくある発想です。ところが、厚生労働省は、過去、下記のような通達を発出しています。
→労働時間の端数処理は、下記の場合に賃金未払いとして取り扱われない1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。(昭和63年3月14日付け基発150号)
☆ただし、この通達が今後も生き続けるかは疑問また、厚生労働省は、賃金の端数処理について下記のような通達を発出しています。
→賃金の端数処理は下記の場合に賃金未払いとして取り扱わない
①1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
②1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金額の総額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。(昭和63年3月14日付け基発150号)
これら2つの通達は、見ようによっては労働時間や賃金の切り捨てを認めているかのようです。しかし、係る通達が発せられたのは昭和63年で、当時、タイムカード等労働時間を正確に把握する機器が普及していなかった時期であることから、正直、時代遅れという感が否めません。特に労働時間の切り捨てに関する通達は、何らかの見直しを余儀なくされる可能性があります。
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弁護士への相談について
令和の時代は、昭和の時代に比べると労働時間を把握することが格段に容易になりました。このため、事業主が労働時間を正確に把握していないことは、上記労働時間に関する是正勧告、思わぬ残業代の発生、従業員の労働時間を把握できないことによる労働災害、の各事業リスクを高めることとなります。
当然得策ではありません。ただ、事業者にとって個々の従業員の労務時間管理はいわば永遠の課題で、
このために本業に集中できない事態は避けなければなりません。
そこで、労働時間の適正な管理体制を、弁護士と相談しながら構築していくことが適切と考えられます。弁護士が事業実態を確認しながら、個々の従業員の労働時間を適切に把握することのみならず、残業時間が長いと見込まれる従業員のケアや特定の従業員のみに残業が集中しないような業務体制の構築などを事業者と一緒に考えていくことが可能です。お気軽にご相談ください。
また、リブラ法律事務所では単発での相談もお伺いいたしますが、貴社の顧問弁護士に就任して活動することをお薦めしています。顧問弁護士の役割についてもコラムを作成しておりますので、是非、ご確認下さい。
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Last Updated on 4月 4, 2024 by kigyo-lybralaw
この記事の執筆者 事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。 |