はじめに
近年、カスハラとして、事業者にとって理不尽なクレームをつけてくる利用者
の存在がクローズアップされています。介護事業所も対象となるため、具体的
な対策をたてるひつようがあります。
介護事業者がカスハラに対応すべき理由
介護事業者が、その遭遇したカスハラ事案に組織として対応できなければ、
介護事業所の運営が妨げられ、職員が精神を病んでしまうこともあります。しかし、それだけではありません。
厚生労働省は、令和2年6月1日「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)を発出しています。その中には、事業主が、顧客等からの著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、雇用管理上の配慮をすることが望ましいと定められました。
つまり、事業主がカスハラに適切な対処するよう求められているのです。介護事業主が、係る対処を怠って職員に精神疾患等が生じた場合、雇用契約上の安全配慮義務違反として損害賠償請求を余儀なくされる可能性もあるのです。このことから、介護事業主も、カスハラに対応することが必須となりました。
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カスハラか否かの判断基準
介護事業者が利用者等から受けるクレームには正当な内容もあり、これにまでカスハラまがいの対応をしてしまっては、却って事業主としての評判を落とすことになります。
このため、介護事業者は正当なクレームとカスハラとの線引きをする必要があるところ、私の経験上、カスハラと評価できるクレームには、以下の傾向が見て取れます。
・施設側が丁寧に説明をしているのに、同じ話を繰り返す。
・帰らない。
・電話による連絡の時間が不規則である。
・何度も「責任者を出せ」という。
・直接、間接的に金銭を要求する。
・不必要に職員を罵倒し、大声を出す。
・電話でクレームをつけるが、名乗らない。
・これまで施設に来たことがない親族からのクレーム。
正当なクレームをなす場合には必要がない態度ばかりです。
カスハラと判断した場合の対応
・対面、電話を問わず録音する(相手方の同意をとる必要はありません)。
・複数人で対応し、クレームをつける側の人数と同数あるいは1人多くする(威圧して理不尽な要求をすることの防止)。
・クレーム側の言動・語調によっては刑事事件となる(脅迫、強要、不退去)となることを知っておいて、ためらわずに警察を呼ぶ
・一筆は書かない
・電話による場合は、非通知設定電話には出ない、あるいは、電話番号を職員間で共有してとらないようにするという対処も考えられる
・その日の様子をメモで残し、複数人で共有する(証拠化)
このような対応は、既になされている事業者もいるかもしれません。
ただ、それでもカスハラを持て余すことが考えられます。そんなときは、その対処を弁護士に依頼してはいかがでしょうか。
大分の弁護士ができること
大分県の介護事業者にとっては、できる限り速やかに正当なクレームとカスハラ的クレームを見極めて、後者について適切な対応をするようにマニュアル化するとか人員を整えることが理想の対応といえます。
しかし、特にカスハラ的クレームについては介護事業者側も慣れていない(当然ですね)ことから、具体的な現場で適切な対応をとれるとは限りません。介護事業者側の従業員がカッとなったり萎縮したりして、却ってつけ込まれる可能性が否定できません。しかも、介護事業者は他の利用者にも対応すべき地位にあるため、日々の業務に手を取られ、カスハラ対策の訓練もままならない状態ではないでしょうか。
介護事業者が、カスハラ対策として弁護士を窓口として交渉することは決して悪いことではなく、評判を下げることでもありません。むしろ、善良な他の利用者から見れば、理不尽なクレームに毅然と対応する事業者として評判をあげるのではないでしょうか。弁護士ができることは下記のとおりです。
・カスハラ的クレーマーに直接対応し、事業所に連絡させないようにする
・弁護士に介入してもらう前段階として介護事業者が作成する書類の内容について助言する
・実際に紛争が生じた場合、介護事業者に代わってクレーマーと交渉する
・万が一、訴訟提起された場合にも訴訟代理人弁護士として事業者の代わりに法廷活動を行う
・職員に対してカスハラ対策の研修を実施する
・職員がカスハラ対策を協議する際のファシリテーターとなる
・カスハラ対策のマニュアル作りのお手伝いをする
お気軽にご相談ください。
また、リブラ法律事務所では単発でのクレーマー対応相談もお伺いいたしますが、貴社の顧問弁護士に就任して活動することをお薦めしています。顧問弁護士の役割についてもコラムを作成しておりますので、是非、ご確認下さい。
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Last Updated on 4月 4, 2024 by kigyo-lybralaw
この記事の執筆者 事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。 |