介護施設の「まだ大丈夫」が危ない 8つのトラブル類型と2026年カスハラ義務化対策

大分県で介護サービス業を営む経営者の方へ

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夜、事務所の明かりを落とした後や、自宅に帰ってから、スマートフォンで「介護 問題職員 対応」「介護 家族 クレーム どこまで」と検索したことはないでしょうか。

日中は、シフトの穴埋め、ご家族への連絡、行政への提出書類に追われて、考える時間がない。夜になってようやく、頭の片隅に引っかかっていた「あの件」に向き合う。何度指導しても勤怠が改善しない職員のこと。特定の後輩にだけ当たりが強いベテランのこと。「あの職員を担当から外して」と繰り返し電話をかけてくるご家族のこと。ヒヤリハットで済んだけれど、次は済まないかもしれない移乗介助のこと。

誰かに相談したい。でも、理事会に上げるほどの「事件」ではない。顧問税理士に話す内容でもない。同業の知人に話せば、狭い地域ですから、どこから広まるかわからない。――そうして一人で検索を続けている介護事業所の経営者・施設長・管理者の方に、この記事を書いています。

結論を先に申し上げます。介護事業の法的トラブルは、「弁護士に相談するほどではない」と感じられる今の段階の対応で、その後の展開が決まります。この記事では、大分・九州の介護事業所で実際に生じやすい8つのトラブル類型と、2026年に施行された・される2つの大きな制度変更への備えを、順を追って整理します。

1. よくあるご相談

当事務所に介護事業所の方から寄せられるご相談には、共通する特徴があります。多くの方が、「もっと早く相談すればよかった」という言葉とともに話を始められることです。

・「問題のある職員に何度も注意してきたが、口頭ばかりで記録を残していなかった」

・「ご家族からの要求が少しずつエスカレートしているが、利用者ご本人のことを思うと強く出られない」

・「中堅の職員から『あの先輩と同じシフトなら辞めます』と言われ、どちらの肩も持てずにいる」

・「退職した元職員の代理人弁護士から、未払残業代を請求する内容証明が届いた」

そしてもう一つ、共通することがあります。皆さま、口を揃えてこうおっしゃるのです。「うちは職員同士の仲がいいから、大丈夫だと思っていた」と。

そのお言葉は、多くの場合、事実です。介護の現場は人と人との関係でできており、大分の事業所は特に、地域の顔の見える関係の中で運営されています。職員の仲の良さは、間違いなく事業所の財産です。ただ、当事務所がご相談を受けてきた中で申し上げられるのは、トラブルは「仲の悪い職場」で起きるとは限らない、ということです。むしろ「仲がいいから」記録を取らず、「長い付き合いだから」書面を交わさず、「話せばわかるから」ルールを曖昧にしてきた職場でこそ、いざ関係がこじれたときに、守ってくれるものが何もない状態が生まれます。

「大ごとにしたくない」というお気持ちは、間違いではありません。ただ、大ごとにしないためにこそ、法的な準備が要る。これが、この記事全体を貫くただ一つのメッセージです。

2. 介護業で生じやすいトラブル

2-a. 問題社員への対応

勤怠不良、利用者への不適切な言葉づかい、協調性の欠如。介護現場の問題社員対応で最も多い誤解は、「問題行動が続けば解雇できる」というものです。

日本の法制度では、解雇のハードルは非常に高く設定されています。指導の記録、改善の機会の付与、注意・戒告といった段階的な処分――こうした手順を踏まない解雇は、後に裁判所や労働審判で無効と判断されるリスクが高く、その場合、解雇期間中の賃金の支払い(いわゆるバックペイ)を命じられることもあります。

「そこまでしなくても、話せばわかってくれるのでは」と思われるかもしれません。実際、話してわかってくれるなら、それが一番です。ただし、その「話した」事実を記録に残すことは、話し合い路線と何ら矛盾しません。指導記録は、職員を追い詰めるための武器ではなく、「事業所は改善の機会を十分に与えた」ことを示す、事業所と誠実に働く他の職員たちを守る盾です。

2-b. 現場のハラスメント

職員間のパワーハラスメントは、介護現場では「指導」との線引きが難しい形で現れます。経験の浅い職員への厳しい叱責が、本人には「利用者の安全のための教育」のつもりでも、受け手や周囲には「いじめ」と映る。この構図は、技術の継承を現場のベテランに頼らざるを得ない介護業ならではの難しさです。

事業主には、ハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務がすでに課されています。相談があったのに「あの人は昔からああいう言い方だから」と流してしまうと、加害職員個人の問題にとどまらず、法人自体の責任が問われ得ます。そして人材難の大分で、放置の代償は法的責任だけでは済みません。退職した職員の声は、求人サイトの口コミや地域の評判として残り、次の採用を静かに難しくしていきます。

2-c. 不適切ケアへの対応

不適切ケアの問題は、高齢者虐待防止法上の通報義務や行政対応と地続きです。「虐待とまでは言えないが、望ましくないケア」を職員が目撃したとき、事業所がどう動いたか。その初動は、後に行政が事業所の体質を判断する重要な材料になります。

ここで対応をためらわせるのは、「公にすれば、頑張っている他の職員まで疑われるのではないか」「行政に知られれば、指定の取消しにつながるのではないか」という不安でしょう。しかし実務上は逆です。事実確認の手順を踏み、必要な場合には自ら行政に報告し、再発防止策を示した事業所と、発覚まで抱え込んだ事業所とでは、行政の見る目がまったく異なります。虐待防止委員会の運営や指針の整備を含め、「発見できる仕組み、対応できる仕組みがある」こと自体が、事業所と職員を守ります。

2-d. 利用者・家族からのカスタマーハラスメント

「利用者様・ご家族様は大切にしなければならない」。この介護の価値観そのものが、カスハラへの対応を難しくしてきました。毎日のように続く長時間の電話。特定の職員への人格攻撃。「金を払っているんだから」という無理な要求。これらを「介護の仕事のうち」として職員個人に耐えさせることは、もはや許されない時代になっています。

介護労働安定センターの調査でも、利用者・家族等からのハラスメントは、特に訪問系サービスを中心に、職員の定着を妨げる一因と指摘されています。現場の職員がじっと耐えているとき、彼らが見ているのは、ハラスメントをしてくる相手ではありません。それを知った経営者・管理者が、どう動くかです。「施設として対応する。あなた一人に対応させない」と言えるかどうかが、採用難の時代に職員から選ばれ続ける事業所かどうかの分かれ目になります。

そしてこの論点は、次章で述べるとおり、2026年10月からすべての事業主の法的義務になりました。

2-e. 労災事故

介護業は、労働災害の多い業種です。移乗介助での腰痛、夜勤中の転倒、認知症の利用者からの暴力による負傷。「介護の仕事に怪我はつきもの」という感覚が現場に残っているとすれば、それ自体がリスクです。

労災が発生した場合、労災保険の手続きで終わるとは限りません。事業所には職員に対する安全配慮義務があり、人員体制や設備、教育の不備が事故の一因と判断されれば、労災保険とは別に、職員から損害賠償を請求される可能性があります。事故が起きてからの対応はもちろん重要ですが、法的責任の分かれ目は、事故を防ぐ体制をどこまで整えていたか、そしてそれを記録で示せるかにあります。

2-f. 未払い残業代トラブル(変形労働時間制)

シフト制で24時間運営する介護施設の多くは、1か月単位の変形労働時間制を採用しています。ここに、介護業で最も「静かに進行する」リスクが潜んでいます。

変形労働時間制は、就業規則等での定め、各日・各週の労働時間の事前の特定など、法律上の要件を厳格に満たして初めて有効になる制度です。「ひな形の就業規則に書いてあるから大丈夫」と思われるかもしれません。しかし、規定はあってもシフトの特定方法が要件を満たしていない、直前のシフト変更が常態化している、といった運用の不備で、変形制そのものが無効と判断される例があります。無効となれば、1日8時間・週40時間の原則どおりに計算し直した残業代を、遡って請求されるリスクが生じます。

恐ろしいのは波及です。退職した職員1人からの請求で制度の不備が明らかになれば、同じ制度で働く在職職員全員に同じ問題があることになります。1人分の請求では済まない――これが、変形労働時間制の点検を「いつかやろう」で先送りしてはいけない理由です。

2-g. 労働審判

労働審判は、原則3回以内の期日で決着する迅速な紛争解決手続きです。迅速であることは、申し立てられた事業所側にとっては「準備の時間がない」ことを意味します。

申立書が届いてから第1回期日まで、通常は1か月あまり。その間に、事実関係の整理、証拠の収集、答弁書の作成をすべて終える必要があり、第1回期日でおおよその心証が形成されると言われます。つまり、初動の数週間で結論の大勢が決まるのです。このスピードに、日々の業務を抱えながら独力で対応するのは現実的ではありません。そして皮肉なことに、この場面で事業所を救うのは、2-aで述べた日常的な指導記録や、2-fで述べた労働時間管理の記録です。日頃の記録の整備こそが、労働審判における最大の防御になります。

2-h. 団体交渉

ある日突然、社外の労働組合(合同労組・ユニオン)から団体交渉の申入書が届く。職員が一人で加入できる組合からの申し入れは、介護事業所でも珍しいことではなくなりました。

まず知っておいていただきたいのは、正当な理由なく団体交渉を拒否することは、法律上できないということです。「うちには組合はない」「本人と直接話す」という対応は、不当労働行為と評価されるリスクがあります。一方で、誠実に交渉に応じる義務はあっても、組合の要求をすべて受け入れる義務はありません。誠実交渉義務を果たしつつ、譲る必要のない点は譲らない。このバランスの見極めには労働法の専門知識が必要であり、経営者が1人で交渉のテーブルに着く必要はまったくないのです。

3. 介護業トピック(2026年の2大変化)

3-a. カスハラ対策義務化(2026年10月1日施行)

2025年6月に成立・公布された改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策がすべての事業主の法的義務になります。従業員を1人でも雇用していれば対象で、中小企業への猶予措置はありません。厚生労働省の調査では、過去3年間にカスハラの相談があった企業は27.9%にのぼり、前回調査から8.4ポイント増加しています。介護・福祉は、利用者・家族との継続的で密接な関係ゆえに、この問題と正面から向き合わざるを得ない業種です。

介護事業所が施行日までに整備すべき事項は、①カスハラを容認しない方針の明確化と職員・利用者側への周知、②相談窓口の設置、③発生時の対応体制・マニュアルの整備などです。義務に違反した場合、行政による助言・指導・勧告、さらには企業名公表の対象となり得ます。

大切なのは、これを「規制への対応」と捉えないことです。カスハラ対策の方針を明文化することは、現場の職員に「この施設は自分たちを守ってくれる」と示す、最も明確なメッセージになります。義務化は、これまで「利用者・家族との関係」を理由に踏み出せなかった経営者の方にとって、「法律で決まったので」という大義名分を手にできる機会でもあるのです。施行までの残り時間で、方針策定・就業規則への反映・現場への周知を計画的に進める必要があります。

>>2026年10月カスハラ対策が義務化!運送・建設・介護業の中小企業が今すぐ始めるべき対策と実践チェックリスト

3-b. 介護報酬の臨時改定(2026年6月1日施行)

通常3年に1度の介護報酬改定が、2026年6月1日、処遇改善に特化した臨時改定として前倒しで実施されました。介護従事者全体を対象とする月額1万円の賃上げに加え、生産性向上や協働化に取り組む事業所には月額7,000円の上乗せが設けられ、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援も新たに処遇改善加算の対象に加わっています。

経営面の追い風であることは間違いありません。ただ、見落とされがちなのは、この改定が労務管理と直結している点です。処遇改善加算の算定には、賃金改善計画の策定、キャリアパス要件・職場環境等要件の整備が求められ、就業規則や賃金規程の見直しを伴います。「加算は取ったが、規程の整備が追いついていない」「配分のルールが職員に説明できない」という状態は、それ自体が新たな労務トラブルの火種です。報酬改定への対応と労務体制の整備は、別々の仕事ではなく、一体の仕事として設計する必要があります。

4. 弁護士ができること

ここまで、8つのトラブル類型と2つの制度変更を見てきました。共通する結論は一つです。トラブルが起きてからの対応より、起きる前の体制整備のほうが、費用も、時間も、そして何より現場の消耗も、はるかに小さく済みます。

少し想像してみてください。就業規則と変形労働時間制の点検が終わり、指導記録の様式が現場に定着し、カスハラ対応方針が掲示され、職員が「何かあれば施設が守ってくれる」と知っている状態を。ご家族から無理な要求があっても、対応の手順が決まっているので、職員が一人で抱え込まない。理事会や評議員会で「2026年の法改正には対応済みです」と報告できる。監査や実地指導の通知が来ても、慌てて書類を作る必要がない。――これは特別な施設の話ではなく、順番に整備すれば、どの事業所でも到達できる状態です。そしてその整備は、「職員を大切にしたい」と考えてこられた皆さまの経営方針を、目に見える形にする作業にほかなりません。

弁護士法人リブラ法律事務所は、大分市を拠点に、介護・福祉分野を含む中小企業の企業法務に取り組んでいます。就業規則・変形労働時間制の点検、カスハラ対応方針や虐待防止指針の整備支援、問題社員対応の初動助言、未払残業代請求への対応、労働審判・団体交渉の代理まで、介護事業所の実情に即したサポートを提供しています。東京の大手事務所の一般論ではなく、大分・九州の介護事業所の人員体制と地域事情を踏まえた、明日から実行できる対策を一緒に設計します。

「相談するほどのことか、わからない」――その段階でのご相談こそ、歓迎します。初回相談でお話を伺った方の約半数は、相談のみで終えられています。それでよいのです。まず、状況を整理する30分としてお使いください。

ご相談前によくいただくご質問

Q1. 初回相談はいくらかかりますか?

30分5,500円(税込)です。Web相談・お電話でのご相談も同じ料金です。

Q2. 何を準備すればよいですか?

準備は不要です。就業規則やシフト表、ご家族とのやり取りの記録など、手元に資料がある方はお持ちいただくとより具体的なお話ができますが、「何が資料になるのかわからない」という段階のご相談で構いません。

Q3. その場で顧問契約を迫られませんか?

ご相談と契約は分けています。初回相談にお越しになった方の約半数は、ご相談のみで終えられています。

Q4. 社内や取引先に知られませんか?

弁護士には法律上の守秘義務があります。ご連絡やお打ち合わせを経営者ご本人とのやり取りに限定する設計も可能です。

Q5. 相談だけで終わってもいいのですか?

もちろんです。半数の方はご相談のみで終えられています。「状況を整理できただけで十分だった」――それで構いません。

Q6. 現場の職員に知られずに相談できますか?

可能です。ご相談の事実もその内容も、施設内の誰にも伝わることはありません。「職員のことを弁護士に相談した」と本人や現場に知られたくない、というご事情には日常的に配慮しています。

Q7. 相談したことが監督官庁(市や県)に漏れませんか?

漏れません。弁護士への相談は守秘義務に守られており、行政に報告されることはありません。むしろ、実地指導や監査への対応が必要な場面では、行政対応の進め方そのものをご一緒に検討できます。

お問い合わせ

弁護士法人リブラ法律事務所

所在地:大分県大分市中島中央2-2-2

TEL:097-538-7720 FAX:097-538-7730

Email:lybra@triton.ocn.ne.jp

初回相談:30分5,500円(税込)/Web相談・電話相談対応/ご相談のみでの終了も可能です

介護事業所のための労務トラブル予防チェックリスト

チェックリストのダウンロードはこちら

□ 職員への指導・注意を、日付入りの記録として残す仕組みがある

□ 就業規則が、ひな形ではなく自事業所のシフト・夜勤の実態に合わせて整備されている

□ 1か月単位の変形労働時間制の要件(規程の定め・シフトの事前特定)を専門家が点検したことがある

□ 職員間ハラスメントの相談窓口が設置され、全職員に周知されている

□ 虐待防止委員会・虐待防止指針が整備され、形骸化せずに運用されている

□ 利用者・ご家族からのハラスメントへの対応方針が明文化されている

□ カスハラ対応の窓口・手順を2026年10月1日までに整備する計画が立っている

□ 処遇改善加算の要件と、就業規則・賃金規程の内容が整合している

□ 労災発生時の初動手順(記録・報告・原因分析)が決まっている

□ 団体交渉の申入書が届いたとき、すぐ相談できる専門家が決まっている

チェックがつかない項目が3つ以上ある場合は要注意です。

【理事会・関係者共有用の要約】

介護事業所では、問題社員対応・カスハラ・未払残業代などの労務トラブルが経営リスクとなっており、2026年10月1日からはカスタマーハラスメント対策が全事業主の法的義務になります(違反時は行政の指導・勧告・公表の対象)。弁護士法人リブラ法律事務所(大分市)は介護・福祉を含む中小企業法務を扱い、就業規則の点検から団体交渉対応まで支援しています。初回相談30分5,500円(税込)・Web相談可・相談のみでの利用も可能です。TEL:097-538-7720

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    Last Updated on 8月 7, 2026 by kigyo-lybralaw

    この記事の執筆者
    弁護士法人リブラ総合法律事務所

    事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。

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