介護施設における高齢者虐待とは?実際に虐待とされた事例とは?

大分県の介護施設における高齢者虐待とは?適切な対応について弁護士が解説!

介護施設での高齢者虐待が発生・発覚すると、地域メディアで報道されることが常となっています。

実際、大分県は、介護施設や介護事業所で働く介護職による虐待事案を公表しています。大分県下で、虐待と評価された事案をご紹介します。

1 高齢者虐待とは

厚生労働省のホームページでは、下記の説明がなされています。

・身体的虐待:高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴力を加えること。

・介護・世話の放棄・放任:高齢者を衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、養護者以外の同居人による虐待行為の放置など、養護を著しく怠ること。

・心理的虐待:高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

・性的虐待:高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。

・経済的虐待:養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。 

上記は「高齢者が他者からの不適切な扱いにより権利利益を侵害される状態や生命、健康、生活が損なわれるような状態に置かれること」を虐待と定義し、具体的に分類したものです。勿論、介護施設の職員がこのような行為を行ってはいけません。

2 大分県下での養介護施設従事者等及び養護者による高齢者虐待の状況

大分県下の介護施設ではどのくらいの虐待事案が存在するのでしょうか。

大分県は、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」第25条の規定に基づき、令和4年度の養介護施設従事者等及び養護者による高齢者虐待の状況を公表しています。(※令和4年度高齢者虐待の状況、大分県庁の資料より

その概要は下記のとおりです。

・大分県下で、令和4年度に、養介護施設従事者等による高齢者虐待に関する相談・通報件数は16件、市町村が事実確認を行った結果、虐待を受けた又は受けたと思われると判断した事例(以下「虐待判断事例」という。)は4件。

・養介護施設従事者等による高齢者虐待の状況は以下のとおり

 ・ベッド脇に置いてあった使用済みのオムツパッドを取り上げて、床に投げつけた後、手荒いオムツ   交換を行った。

 ・唾を吐きかけられたことに対して、大きな声を出してベッドを蹴った。

 ・殴りかかろうとされたことに対して、壁に押しつけ強い口調で咎めた。

 ・家族との面会時、声かけに反応がないことに対し、首の後ろをつねった。

このほか、最近、介護施設が、認知症男性に『おむついじり』しにくい下着やオーバーオールを着せた(家族が同意している)ことが『虐待に当たる不当な身体拘束』と判断された事例もあります。

(※Yahoo!ニュース【速報】認知症男性に『おむついじり』しにくい下着やオーバーオール 家族は同意するも『虐待に当たる不当な身体拘束』と滋賀県 特養老人ホームに行政処分)

介護施設での高齢者の身体拘束は例外的な場合にのみ是認される手段です。

いくら家族の同意があっても高齢者が同意しなければ不当な身体拘束と判断されます。

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また、残念な話ですが、介護職員から施設利用者への性的虐待も度々報道されています。虐待は身近なところにあるのです。

3 要介護施設従事者等による虐待が生じる原因

厚生労働省による「令和元年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」によると、虐待の原因は

・「教育・知識・介護技術等に関する問題」が366件(56.8%)

・「職員のストレスや感情コントロールの問題」が170件(26.4%)

「虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等」が132件(20.5%)

・「人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ」が81件(12.6%)

が多数でした。

介護施設で生じる虐待は、職員の人間性という個人の資質ではなく、職員への教育、職場環境、人員不足という、介護事業所側の構造的な要因が原因で生じることが、上記調査結果からも伺えます。具体的に見てみましょう。

<教育・知識・介護技術等に関する問題>

介護知識や経験が浅い介護職員は、高齢者の病気や心身の状況について理解が

足りず、自分への嫌がらせ等という思い込みに陥る、あるいは「どうせ何を

言っても認知症だから分からない」という誤解から、平気で暴言を吐くことが

あります。

<職員のストレスや感情コントロールの問題>

介護サービスの提供は重労働です。高齢者の生命や身体を預かるという重い責任を有しているのに、認知症の利用者から罵倒され、あらぬ疑い(物とられ妄想に基づく)をかけられ、時には暴力やハラスメントを受けることもあります。ただ、介護現場では「当たり前」と認識され、職員が誰にも相談できないことから更にストレスを増幅させるのです。介護職員も人間であり、心のコントロールができなくなる状態が生じ得ます。

<虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等>

代表的な体制は隠蔽体制です。

事業所が虐待事案を把握したのに通報せず、親族に報告をしない上、職員に口止めをした場合、係る経験をした職員は、以後、同様の場面を目撃しても見て見ぬ振りをする傾向にあります。虐待をした職員からすれば、そこで処分がされず、虐待が公にならなかった場合、同じことを繰り返す可能性は高まります。

また、内部通報を検討した職員を仲間外れにするような態度を取り、良心のある職員が離職してしまうということもあります。

<人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ>

介護事業実施のために十分な人材を確保できない事業所で就労する職員は、

一度に複数人に対処しなければならない事態が発生することで、徐々にストレスをためていきます。下手をすれば、休憩さえ十分に取れない状態に置かれて

いることも考えられます。このような恒常的な人手不足による過重労働で、職員は心身ともに疲労し、余裕を持って介護サービスを提供することができなくなり、虐待をしてしまうこともあり得ます。

4 具体的な対処方法

下記URLは、和歌山県が、ホームページで、高齢者虐待防止に向けて公開した、施設従事者、管理者・経営者のための自己チェックリストです。

<業務従事者向け>

高齢者虐待防止に向けた施設従事者のための自己チェックリスト

<管理者・経営者向け>

高齢者虐待防止に向けた管理者・経営者のための自己チェックリスト

是非、一度試してみてください。

そのうえで、施設内で虐待があった場合、またはその疑いがあった場合には、下記の対処をなすことが適切です。

<職員による虐待があったと判断できる場合>

・虐待を受けた利用者の状況確認と治療

・虐待を行った職員に対しては

  ・他の利用者へのサービス担当から外す

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  ・当該職員から事情聴取を行い、客観的資料(防犯カメラの映像、目撃証言)で事実を確定させる。

  ・業務停止命令を発出し、職場に出させない。そのうえで、当該職員を処分するかどうかを決定する。

・被虐待者の親族に連絡し、事情を説明する

・市町村に対して通報する(高齢者虐待防止法上の義務)

・行政の立ち入り検査等調査があった場合は協力する

<職員による虐待があったと直ちには判断できない場合>

・詳細な調査(聞き取り、防犯カメラのチェック)

・虐待を疑われた職員は、虐待を受けたと申告した者の担当から外れる

・職員に業務停止命令を発出するかどうかは、疑われている虐待の内容次第。介護施設内で虐待が生じた場合、虐待をした個人だけではなく、事業主も民事・刑事上の責任を負う可能性があります。これらの事に対処するためにも、十分な調査は必要です。

5 高齢者虐待を予防するために

介護事業者に求められる対応は下記のとおりです。

・職員のストレスを緩和する

・職場環境の改善。具体的には、複数人による業務の実施で職員を1人に

しない体制づくり。

・虐待防止のための研修の実施

・虐待防止マニュアルの作成。その際、下記を参考にしてください。

(神奈川県 高齢者虐待防止対応マニュアル)

6 リブラ法律事務所ができること

大分県の介護事業者は、施設内で虐待事案が発生して欲しくないと思っています。

しかし、施設内での虐待は、事業所の構造的問題とも言え、これを予防するためには、人員の確保、現存職員のみによる虐待予防オペレーションの確立、職員のストレスケア、マニュアルの作成等が必要となります。しかも、介護事業者は他の利用者にも対応すべき地位にあるため、日々の業務に手を取られ、施設内虐待対応も十分とは言えない状態ではないでしょうか。

リブラ法律事務所ができることは下記のとおりです。

・虐待発生時の対応サポート

・虐待防止の研修

・虐待防止マニュアルの作成にあたっての助言・指導

・実際に紛争が生じた場合、介護事業者に代わって被虐待者等と交渉する

・万が一、訴訟提起された場合にも訴訟代理人弁護士として事業者の代わりに

法廷活動を行う

お気軽にご相談ください。

また、リブラ法律事務所では単発での虐待事案対応相談もお伺いいたしますが、貴社の顧問弁護士に就任して活動することをお薦めしています。顧問弁護士の役割についてもコラムを作成しておりますので、是非、ご確認下さい。

大分県で顧問弁護士をお探しの事業主の皆様

顧問サービスの内容について

顧問弁護士のメリット

顧問弁護士の活用事例

顧問弁護士の費用について

顧問弁護士を依頼するタイミング

正しい顧問弁護士の選び方

<業務従事者向け>

※参考:高齢者虐待防止に向けた施設従事者のための自己チェックリスト

<管理者・経営者向け>

※参考:高齢者虐待防止に向けた管理者・経営者のための自己チェックリスト

そのうえで、施設内で虐待があった場合、またはその疑いがあった場合には、下記の対処をなすことが適切です。

<職員による虐待があったと判断できる場合>

・虐待を受けた利用者の状況確認と治療

・虐待を行った職員に対しては

・他の利用者へのサービス担当から外す

・当該職員から事情聴取を行い、客観的資料(防犯カメラの映像、目撃証言)で事実を確定させる

・業務停止命令を発出し、職場に出させない。そのうえで、当該職員を処分するかどうかを決定する。

・被虐待者の親族に連絡し、事情を説明する

・市町村に対して通報する(高齢者虐待防止法上の義務)

・行政の立ち入り検査等調査があった場合は協力する

<職員による虐待があったと直ちには判断できない場合>

・詳細な調査(聞き取り、防犯カメラのチェック)

・虐待を疑われた職員は、虐待を受けたと申告した者の担当から外れる

・職員に業務停止命令を発出するかどうかは、疑われている虐待の内容次第。

介護施設内で虐待が生じた場合、虐待をした個人だけではなく、事業主も民事・刑事上の責任を負う可能性があります。これらの事に対処するためにも、十分な調査は必要です。

大分県で介護サービス業を営む経営者の方へ

Last Updated on 5月 15, 2024 by kigyo-lybralaw

この記事の執筆者
弁護士法人リブラ総合法律事務所

事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。

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