飲食店で起こるクレームへの対処法とは?-551のカスハラ事件について思うこと-

飲食店で起こるクレームへの対処法とは?-異物混入や食虫毒や腹痛などによる体調不良-

1.クレーム対応とは?(こちら原稿を書いているのは令和5年12月5日)

最近、このような報道を目にしました。

(引用開始 2023.11.22 毎日新聞)

  豚まんで有名な「551蓬萊」(大阪市)の社員だった男性(当時26歳)が自殺したのは、客から理不尽なクレームを受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)や長時間労働が原因だとして、男性の母親が、労災と認めなかった国の決定の取り消しを求めて提訴した。・・・訴状によると、男性は2015年3月に入社後、通信販売の電話受付業務を担当。チルド商品の注文やクレームの電話に対応し、客から「死ね」「バカ」などと罵声を浴びせられることもあった。17年10月にうつ病と診断されて休職し、18年6月に自殺した。遺族は労災申請したが、大阪中央労働基準監督署は21年3月、「心理的負荷は強くなかった」として労災と認めなかった。

(引用終了)

この事案は、ご遺族が労災認定を求めて国を提訴した事案であり、企業に対する訴訟ではありません。

しかし、企業が従業員に対して負担する義務には「安全配慮義務」があります。企業には、従業員が安心して業務に従事できるように配慮する義務の一環として、カスハラについても具体的な業務体制を構築する義務があるといえます。

 また「UAゼンセン」(流通やサービス業などの産業別労働組合)が2020年に実施したアンケートでは、カスハラについて56.7パーセントが「過去2年以内に被害に遭った」と回答し、最も印象に残った行為として、暴言が39.3パーセント、同内容のクレームを繰り返すが17.1パーセント、威嚇や脅迫が15.0パーセントあり、従業員の対応として最も多かったのは「謝り続ける」こと、という結果が示されています。

飲食業における電話受付では、匿名性に乗じて心無い暴言や罵声を浴びせる顧客がいるのに対して、従業員側は、自分の対応が悪いと口コミサイトなどで店の評判を落としてしまうかもしれないと萎縮しがちです。上記アンケートで、従業員の対応で「謝り続ける」ことが最も多いのは、係る背景もあるのではないか感じます。飲食店のクレーム対応は、電話対応のみならず対面対応でも初動が大切で、初動を誤ると、問題が長期化しがちです。

今回は、飲食店の「電話対応」、「異物混入」、「食中毒等体調悪化」、「顧客の服を汚した」という、日常的にありがちな事例に基づいて解説します。

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2.電話対応で暴言等を受けた場合の対応

電話における会話の内容が正当なクレームであれば、謝罪の上で具体的な対応を検討するのが基本です。ただし、内容において正当ならどんな言葉遣いでもよいわけではありません。電話対応については、下記の点について企業としてのマニュアルを作成するのが有用です。

・非通知の電話や公衆電話からの着信拒否をするか否か

・電話の内容を録音するか否か

録音する場合にはどのような場合に録音するか

・電話対応をする人がカスハラにあった場合にどのような対応をするか

・電話での対応でNGとする事項

・どのようなことが発生した場合に他の人に対応を依頼するか

実際に発生したカスハラ事例を共有し、マニュアルを定期的に見直すのも大事です。

その他、マニュアル化するなら、カスハラ特有のパターンを類型化して、言い回しまでマニュアル化するのも1つでしょう。最近では、カスハラ対応の書籍も出版されておりますので、その本で言い回しを学ぶもの大事です。要は、企業として組織的に取り組む必要があるということです。

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3.異物混入クレームに対する対応

異物といっても様々あるところ、例えば毛髪の混入やプラスチック・木片等の混入については、顧客が意図的に混入させる可能性が低いといえます。つまり、店側の過失によるものである可能性が高いと言えます。

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この場合、企業側の対応としてはすぐに謝罪し、料理を交換するのが大事です。代金はいただきにくいですね。ただ、早期に対応すれば、慰謝料まで支払う必要はありません。異物の中でも、例えば金属片が顧客の口内に入れば、怪我をする可能性があります。その場合は、治療費や慰謝料という問題が生じ得ますので、丁重な対応が必要です。

4,食中毒等体調悪化とのクレームを受けた際の対応

この場合は、対応を誤ると紛争が長期化しかねません。

店側に落ち度がある場合は、速やかに謝罪し、店側が初回の治療費を負担し、診断書の取得・提出を依頼してください。

ただ、店側に落ち度があるかどうかは確認すべきです。そのため、クレームを受けた際には、まず事実を確認し、クレームの原因が店側にあるかどうかを問わずに謝罪は必要です。謝ったこと自体で「店の落ち度を認めた」ことにはなりません。

<確認すべき事実>

・顧客の症状

・いつ発病したか

・いつ来店されたか

・当日食べた料理の内容

・顧客が来店された際の人数。もし複数で来られた場合には、他の人にも同様の症状が出ているか。

・顧客の連絡先

事実を確認し、最初の治療費はお支払いする代わりに診断書の交付を依頼し、そこから店としての調査を開始します。調査の方法としては、ほかに同じ症状を訴える顧客がいるかどうかや、外部の検査業者に依頼することも有用です。調査の結果、店の料理が原因でない場合は、お客様に調査の結果を報告します。この報告の際には、ある程度の役職の方がいた方がよいです。顧客と意見が対立する可能性もありますが、調査の結果、店側が提供した料理が原因ではないといえるのであれば、きちんとその旨を伝え、以後の治療費等はお支払いできないことも伝えるべきです。ここできっぱりと伝えないと、

その後も治療費等を要求されることがありえます。

また、調査の結果、店の料理が原因の場合は、改めて顧客に謝罪します。

この場合、顧客が被った損害のうち店側で判断が難しいのは、休業損害や慰謝料です。勿論、顧客と誠意をもって協議をして示談ができればよいのですが、どうにも、損害に関するお互いの主張がかみ合わない場合は、その時点で弁護士に依頼するのも手でしょう。損害賠償の基準は、休業損害については実際に仕事を休まれた日数に日額賃金等を乗じたもの、また、通院したことによる慰謝料は、概ね、交通事故における慰謝料基準と同様に考えればよいでしょう。

5.まとめ

以上、飲食店における代表的なクレームについてお話ししました。

大事なことは、クレームに対する対応を、特定の従業員任せにせず、組織として対応するという意思をもち、マニュアルの作成や同種事例の共有を図ることです。組織として対応するという姿勢を持つことで、従業員も慌てずに、安心してクレーム対応ができます。

また、企業ができることの限界をも決定し、その限界を超えた場合には弁護士に対応してもらう、という姿勢も必要です。店の紛争に弁護士まで介入したとなれば店の評判が落ちるのでは、とご心配の向きもあるでしょうが、それまでの対応が適切であれば、一時的に評判が落ちたとしても回復することは十分可能です。

リブラ法律事務所では、飲食店へのクレームについても対応可能です。クレーム対応への準備など心配な点がありましたら、お気軽にご相談ください。

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Last Updated on 6月 12, 2024 by kigyo-lybralaw

この記事の執筆者
弁護士法人リブラ総合法律事務所

事務所に所属する弁護士は、地元大分県で豊富な経験で様々な案件に取り組んでいたプロフェッショナルです。ノウハウを最大限に活かし、地域の企業から、起業・会社設立段階でのスタートアップ企業、中堅企業まであらゆる方に対して、総合的なコンサルティングサービスを提供致します。弁護士は敷居が高い、と思われがちですが、決してそのようなことはありません。私たちは常に「人間同士のつながり」を大切に、仕事をさせて頂きます。個人の方もお気軽にご相談下さい。

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